わたしがクラウドを見るのは、いつだって後ろ姿だった。 彼の背中にはいろんなものが背負い込まれてる。 一緒に旅を続ける度にそれはどんどん増えていって。彼自身、背負いきれなくなるほどのものを抱えていた。 降ろしていいものも、不器用に抱えて、新しいものをどんどん積み重ねていく。 一緒に背負ってあげたかった。 けど、口に出せなかった。 仲間を信頼していないわけじゃない。 全部自分の荷物だと思っている。 それらをどうしたらいいのか、彼自身にもわからなかったんだろう。次第にそれは重くなっていき、彼を苦しめている。 見ていて辛かった。 何も話してくれない彼の背中を見ていると、悲しくなった。 彼の背中に身体を預ける。 わたしも一緒に抱えたい。一緒に解決方法を見つけたい。 クラウドが本当に笑っているのを見たいから。 「名前…?」 「どうしてクラウドはそうなの?どうして、わたしには何もわけてくれないの?なんで一人で勝手に辛くなるの?」 「…」 「ティファもバレットもいるよ?ヴィンセント、ナナキ、シド、ユフィ、ケット・シー。みんなみんな、クラウドのこと心配してるんだよ?」 それに、クラウドは何も悪いことしてない。なのに。 「名前、でも、これは」 「でも、じゃないよ。一緒に答え探そうよ。それとも、わたしじゃだめ?」 まるで、告白じみたことを言ってしまう。そんなわたしにクラウドはただ困るだけだって、わかってるのに。 「ダメじゃない。けど、名前には背負わせたくない」 「わたしだって、力になりたい。だって…」 だって、クラウドが大切だから。 クラウドが壊れていくの、もう見ていられない。 「…ううん、なんでもない」 クラウドから離れて、その背中をまた見る。わたしにできるのは、見てることしかないの? 振り返ったクラウドの表情は、思っていたよりも苦しそうだった。 わたしが彼の背中ばかりを見ていたのは、この顔を見ることができなかったから。 辛い。苦しい。 「名前にはそんな顔してほしくない。笑っていてほしい」 「わたしだって、クラウドには笑っていてほしいんだよ?」 彼のこととなると、わたしは本当に苦しくて仕方なかった。 他の人には見せられる笑顔も、クラウドにはなぜか見せられない。 だって、クラウドがこんな風に苦しんでるのに、わたしだけ笑顔になるなんて、そんなことできない。 「一緒に、笑おうよ」 ねえ、クラウド。 少しだけでもいいから、あなたの心を覗かせて? あなたが笑えるように、一緒に笑えるように、二人でなんとかしていこうよ。 121027 |