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「美容サークルでーす。はいどうぞ」

「一緒に美を追求しませんかー」

「もっぴー、美を追求?」

「カッコいいでしょ」

「そんなくさいセリフ言えないよ」


今日は入学式。敢えてあたしたちも学校指定のスーツを着てクビにスカーフを巻いてチラシ配り。

もう今日は怖くない。だって二年生だも。大学のことだいぶ分かってきたもん。

ママのエルメスのスカーフ借りてきちゃったもん。今日のあたしは強い。


「名前?ケータイ鳴ってるよ」

「あ、ママだ。どーしたんだろ」


結果、でなきゃよかった。ママのスカーフ借りたことがバレた。あたしが勝手に拝借したのがよりによっておニューのスカーフだったみたい。


「ママちょー怒ってたんじゃない?音漏れ凄かったよ」

「うん、怒ってた!ちょー怒ってた!こわたんだけど帰りにママのお気に入りの食パン買ってきたら許すってさ!」

「ママ優しいじゃん。どこの食パン?」


なんとママの指定してきた食パンは並ばないと買えない食パンだったみたい。もっぴーのママもそこの食パンがお気に入りみたいでよく買うらしい。平日でも2時間並ぶとか並ばないとか。はぁ、やはりママは鬼だった。


「はぁーっ。1人じゃ無理だよぉ。ちらっ」

「や、こっち見ても無理だよぉ。今日はデートだから」

「あーっ!友達よりも男とる!」

「待って!パン並ぶかデートならデートとるでしょ!」

「んーそうだねぇ。あたしもその二択ならデートだわ」

「でしょ?さ!チラシ配るよ」


くそくそくそ!

もっぴーに言われて可愛い新入生に1枚1枚チラシを配った。取ってくれたりくれなかったり。くれなかったり。なかなか取ってくれない。チラシ配りも大変だわ。

食パン並ぶの誰か手伝ってくれないかな!

お?こないだお姉に言われて家族のスケジュールを把握するカレンダーアプリを取ったんだった。

今日、家族で暇なのはパパと侑士くんか。侑士くん家族じゃないけど。なんならうちの家族じゃない幸村も入ってるんだよね。侑士くん入ってるのに雅治入ってないのよね。うちの家族雑だなぁ。


「侑士くん、並んでくれててありがと!」

「今来たとこやから大丈夫やで。俺来て5分くらいしたら他の人も来てん」

「そうなんだ!ラッキーだね」

「ここの食パンうまいみたいやなぁ。こないだテレビでやってたわ」

「そうみたいだね。ママったらこんな列に並ばすんだから!やになっちゃう!」

「自分が勝手にこれ巻くからやろ」


侑士くんにエルメスのスカーフをクイっと引っ張られた。


「あれ?この話したっけ」

「ママさんから聞いたわ」

「えー!てことは侑士くんが並んでることも?」

「それは知らんで」

「ほっ。侑士くんと並んでるのバレたら絶対怒られるから内緒ね!」

「怒られるか?」

「多分怒られる!さっきもちょー怖かったから」

「ふーん」


インスタのストーリーにパン屋の写メを載せたら幸村からメッセージが来た。幸村家で作ったジャムと幸村母が旅行で買ったハチミツをうちにもってきてくれたらしい。

明日の朝ごはんはそれで決まりだな?


「幸村ってよぉうちくるよな。俺らおらんときに」

「侑士くんの家じゃないけど、そーだね。あたしいなくても来るね」

「仲ええん?同じ部活やったし」

「あー仲良いかも。部活のときは話すけど、学校ではそんな話さないけど2人でよくお茶したりしたし」

「まーくん抜きで?」

「うん。最近は幸村がさっこと付き合ったから4人では遊ぶけど」

「そーなんや。幸村とそない喋ったことないわ。家おってもあんまり会わんし」

「だから侑士くんその家あたしの家だから」


こいつ婿入りする気か?

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