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「へぇー跡部くんてバブリーだねぇ」

「でしょーあたしあんなホテル泊まったの初めて」

「ホテルの部屋でご飯作ってくれるのもすごいね。しかもその場で言ったら何でも作ってくれるんでしょ」

「そうそう!あいつとりあえず唐揚げって言ったんだけど、まじうまい」

「とりあえず唐揚げ?凄腕シェフの作る唐揚げとか気になるけど唐揚げ?」

「あたしもね、え!ってなったけど食べたらってか作ってるとこ見てたら唐揚げチョイスナイスだと思った」


雅治の誕生日が無事に終わり、また平凡な日常に戻った。今日はさっこと前から気になってたチーズタッカルビを食べにきた。あたしもさっこもチーズタッカルビヴァージンだから一緒にロストヴァージンしようぜって。


「クリスマスプレゼントなにあげよーかなてなるの。あいつ誕生日12月だからもう一回考えないといけないじゃん」

「親みたいにクリスマスと誕生日セットにしたら戦争だしね」

「そんなんしたら一生恨まれるよ。あいつ案外ねちっこいから」

「ねぇ、聞いてくれる?」


さっこが少し真剣な顔で言ってきた。なんだろ、幸村か?


「こないださー話の流れで精市にお弁当作ったの」

「ほぉ。あ、まさかメニューがいつも同じってのがバレて怒られたとか?」

「そう!そーなの!過去の私もまさか精市と付き合うとは思ってなかったからね」


さっこと幸村のケンカの原因、それはお弁当のメニューだ。さっこが歴代の彼氏に振る舞ったお弁当の中身は毎回同じメニュー。

おにぎり、海苔が入った卵焼き、プチトマトに菜っ葉のおひたし、ウインナーに冷凍の唐揚げ。あ!あとひじき!

これはあたしらの中ではすごく有名なさっこ弁当のメニューだ。だからネタにもしてた。もちろんこのネタは幸村も知ってて高校時代このネタで何回かいっしょに笑ったこともある。

そのネタのお弁当をさっこは当たり前のように作ってしまい幸村が歴代の彼氏と同じかよと呆れてしまいケンカになったそうだ。


「今回はさっこが100悪いわ。幸村悪くない」

「まじでやってしまったよ。ナチュラルに忘れてた。謝ったんだけど暫くは会いたくないって言われてどうしよーて。もぉこのまま別れるのかな」

「えー別れはしないでしょ、多分。てか幸村がこういうお弁当とかで怒るのが意外って言うのかな、なんか驚いたり」

「ふつー怒るでしょ。初デートが元カノと行ったところだったら怒るでしょ」

「あーそれは怒るわ。嫌すぎ」

「私がしたのは例えたらそれ」

「もう一度お弁当を作っても幸村だからなんか言ってきそう」

「ああ、タイムスリップして自分のこと殴りたい」


んーなにをすれば幸村の機嫌は治るんだ。あぁ、まずその発想が怒りそう。何をすればって考えがだめだ。


「もー正直にさっこの気持ちを言っちゃえば?何しても幸村怒りそうだから、正直に話したらまだ幸村は怒らないかも」

「んーそうだったらいいんだけどなぁ。連絡しても無視されそうだから大学でばったり会えればいいんどけど。学部違うしなんの授業をどこで受けてるかも不明だからなぁ」

「じゃあ今ここに呼んじゃう?」

「来ないでしょ」

「あたしが呼んだらいけるかもよ。今暇だからご飯食べよーって」

「名前さっきストーリーにさっこなうて上げてたじゃん」

「だめだな」


何か良い方法ないかな。2人で頑張って考えたけど疲れたから残りのチーズタッカルビを食べることにした。

噂のチーズタッカルビおいしい。雅治も食べたがってたから今度誘おーっと。

それにしても2人には手っ取り早く仲直りしてほしいな。実はこのカップルと年末のカウントダウンを過ごす予定なのだ。ネズミーランドで。チケットも買ったんだから。お金払ってまだみんなから貰ってないんだ。だから何としてでも仲直りさせねばならん。


「あ!見て見て!」


インスタでみんなのストーリーを見てたら丸井のストーリーに久しぶりにテニス部とテニス!って動画があげられてた。次の丸井のストーリーは5分前で焼肉なうって動画が。


「ここに幸村いるかも!写ってないけど」

「あんたの彼氏の仁王も写ってないね。見た感じジャッカルと真田とー後ろ姿だけどこれって名前のお姉の彼氏じゃない?」

「あ、本当だ。侑士くんだ。あ、こっちはあれだ、名前出てこやんけどあの人」


ほら、あのなんか寝坊助。跡部の家で寝坊防止矯正合宿したら逃亡したってやつ。ジローだ!


「ここに精市いなさそうだよ」

「とりあえず侑士くんに電話してみよ!とりあえず行動行動」


ラインの画面を開き侑士くんのトーク画面を開こうとしたらさっこが急にあたしの肩を叩いてきた。


「名前ー精市からラインきた」

「え!なんて?」

「いまから会えない?だって」

「会ってきなよ」

「うん、でもー何言われるか分からないから怖い」

「怖いと思うけどがんばれ。幸村だって多分さっこに緊張してライン送った思うし」

「そうだね。頑張るわ!じゃあ行くね。お金置いとくから足らなかったらまた次会った時に請求して」

「りょ!頑張ってねー」


さっこは軽く化粧を直して、財布からお金を出して早足で店を出た。ふぅ、仲直りしてるといいな。

残りのチーズタッカルビをだらだら食べながらインスタを見てたら雅治のストーリーが更新されてた。

ふーん。こいつ今日は丸井たちとテニスじゃないんだ。働いとる。まだ7時過ぎだしまーくんのお店に行って差し入れでもしよーっと!


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