04


「光くん、インスタライブしよーよ」

「は、嫌やし。名前とインスタライブとかメリットもデメリットないやん」

「デメリットすらないってどーいう反応すりゃいいのさ」


ばあちゃんをお見送りして光くんを某所へご案内。場所は着くまでのお楽しみってやつ。


「ええ加減どこ行くんか教えてや」

「えーまぁ、唯一あたしが偉そうにできる場所かな」

「なんやねんそれ」

「あ、着いた!ここ!」


花屋とカフェが一緒になったカフェ。たまに行列ができててどうやら人気らしい。ここのコーヒーもデザートも普通のご飯も美味しいんだけど、それ以外にも目的がある。


「いらっしゃいませ!申し訳ございませんが今ちょうど満席になったみたいで」

「嘘つけ!あそことかそことか空いてんじゃん!極悪店員」

「だって名字だから。つい、ね?ってあれそれって確か四天宝寺の財前くん?」

「あ、はい。お久しぶりです、幸村さん」

「そーいえばいとこだったね。ここじゃあれだから席に案内するよ」


そう、ここは幸村のバイト先だ。

幸村に席を案内してもらいメニューと水をもらった。あとでメニュー聞きに来ると言い厨房に戻って行った。


「幸村さーここじゃあれだから席に案内するよーてあたしら客なんだからさっさと案内しろって感じだよね」

「名前がそんな上からな態度やから案内したくないんやろ」

「こんな時じゃないと偉そうにできないからね。あたしのが一応お客様だからね」


ふふんと威張った誰かに頭を叩かれた。誰かって幸村なんだけどね。


「休憩時間もらったから俺もお前と同等のお客様」

「えええーじゃああたしクッキーセット」

「えー俺何しよ。あ、このケーキセットで。飲み物は本日の紅茶で」

「あたしもそれ!幸村よろ!」

「はいはい」


嫌そうな顔をして幸村は再び厨房に戻り紅茶とケーキを持ってきてくれた。


「なんで財前くんいるの?」

「大学受験っす」

「あーこっちに来るんだ」

「こっち言っても東京なんすけど」

「かるーく神奈川ディスりやめてくれる?」


幸村が光くんに押されてる!あの幸村が負けてる!こんなの貴重だ。

2人にバレないようにラインを見るフリしてインスタライブ開始。コメントも閲覧もゼロ。悲しい。あ、侑士くんが見てる。そして俺しか見てないやんってコメントして退出された。またゼロだ。記念にスクショしとこ。

あたしの初インスタライブは1分で幕を閉じてしまった。名前ちゃんのファンですとか、化粧品どこの使ってますかとか聞かれたかったのになぁ。


「なにしてんねん」

「何もしてないよ!」

「どうせバレるから言わなくてもいいよ」

「ほんまやな。いま侑士くんからライン来てた。インスタライブ見たでって」

「へー誰かとラインしてるのかなと思ったらそんなことしてたんだ。てか財前くんって忍足のこと侑士くんて呼んでるんだね」

「あ!あたしもそれ思った!いつの間に!雅治のことも急にまーくんとか言い始めるし」

「着々と未来の名字ファミリーと仲良くなってるね」

「先輩らとテニスしてるときは他校の先輩くらいにしか思ってなかったけど関わったらええ人やなーて」

「へぇ、じゃあ俺も今日からええ人になるのか」

「それはこのお会計払ってくれたらですけど」


光くんがドヤ顔でお会計の伝票を幸村に渡した。幸村は戸惑うこともなく大学合格したしいいよと言った。

おや?その会計の内訳にはあたしの飲食代も入ってる。イコール!あたしも奢られちゃったんだな!これが。


「名字、千円」

「あ、はい」


んなわけないか。

prev nextbkm