02



「おい、仁王に名字」

「んー?」

「なんじゃ?」

「なんで忍足がいんだよ」

「本人に聞けば?隣にいるし」

「プリッ」

「ほんまや跡部ー久々親友と、会うねんからそんなそんな嫌な顔せんといてや」


跡部の心の中は知らないけど、私は雅治とみっちゃんの心の中は分かる。跡部はきっと親友?って思ってるよ、きっと。だって跡部無反応だし。

雅治と空港へ2人を迎えに行こうとしたら、たまたま侑士くんが家にいて俺も行くって言うから連れてったの。車の中ではずーっと侑士くんが高校のときの話をしてくれていて飽きなかった。

どんな話しだっけ、つまんなすぎて覚えてない。えーっと、んーっと。んーっとね、あ!ジローが寝坊し過ぎて1週間跡部の家で寝泊まりしたら2日で脱走してそれからは無遅刻で学校授業部活に行ったらしい。あたしにはジローの寝坊の酷さはわからないけど、脱走て言うからには恐ろしい場所だったんだよ。

あとはーこないだ丸井の童貞の話したからお礼に誰の童貞損失の話聞きたいと言われて誰が興味あんねんとヤナギブソン並につっこんでゲラゲラ笑ってたら空港着いて、男気じゃんけんして勝者雅治のおごりでスタバの新作飲みながら待ってたらみっちゃんと跡部来て今に至る。


「跡部はみっちゃんと隣じゃないから不機嫌なんった!脇腹つねらんでええやん。照れ屋やなぁ」

「ほー跡部はみっちゃんと隣ちゃうから不満なんか」


後部座席の三人の席順が両サイドみっちゃんと跡部で2人の間に侑士くん。まぁ跡部が不満になるのも仕方ないか。みっちゃんはそーでもなさそうだけど。


「みっちゃん真ん中いやだよ。しんどいし。けーごだって嫌でしょ?真ん中」

「ああ。俺生まれて1回もその真ん中に座ったことねぇからな」

「だから俺が真ん中に座ったってんや。感謝しーや」

「てか仁王の家5人家族でしょ?家族全員乗ってしんどくないの?」

「俺んち2台持ちじゃ。だから5人で出かける時はバラバラ。ま、5人で出かけるときなんかあんまないがのぅ」

「それもそーだよねーあ!みっちゃんあそこ食べにいきたい!こないださっこが幸村と行ったとこ!」


みっちゃんはこないださっこらが行った創作和食屋に行きたいそうだ。食べログを見せてもらったらとても美味しそうだし、店内も広くて掘りごたつだしよさそう。

みっちゃんたちイギリスから帰ってきたから日本食恋しいと思うしいいよね。


「あー私これ食べたい!もちピザ」

「あ、みっちゃんそのチョイスいいね!明太子もちピザの方がいいな」

「車ん中で刺身刺身って騒いでたのにもちピザかよ」

「刺身もいるいる!本日の刺身盛!3人前くらいでいいよね?」


ピンポーンと跡部がボタンを押して店員さんを呼んで跡部が注文して跡部が店員さんが持って来てくれたおしぼりを渡してくれた。


「何で俺がこんなことしてんだよ」

「跡部の座った席が悪いぜよ。そーいうのは俺みたいに奥に座らんと」

「ちっ」

「でもみっちゃんと2人のときは跡部が注文とかしてんねんやろ?」

「当たり前だろ、それは」

「さすが跡部だね。ゴールデンウィークに雅治とパリのレストラン入ったときにさー席案内されて雅治がソファ席座りたいて言ったから座らしたの」


そしてあたしがオーダーして料理待ってる間辺りを見回したら気づいたことがあった。それは、両隣のカップルの座る席だった。両隣のカップルは彼女がソファ席で彼氏が通路側のイスの席。そしてそして彼氏が料理をオーダーしてた。これがレディファースト?海外のデートのマナー?なのかなと思った。


「そんで雅治恥ずかしくなっちゃったみたいで次からは自分から注文してくれるようになったし、必ずソファ席を譲ってくれるようになったの」

「あれはほんまに恥ずかしかったぜよ。一生あの店に行きたくないレベルじゃ。トラウマトラウマ。」

「ま、俺に関しては…」

「名前のお姉がそそくさソファ席に座るからそんな問題ならないんでしょ」

「分かってるやん、みっちゃん」

「そこは誰もが分かる行動じゃ」

「お姉元気なの?元気だと思うけど」

「うん。ちょー元気。ね、侑士くん」

「せやな。今は就活のためにイメチェンして少し驚いてる。名前ちゃん見せたって」


え、あたしかよ。そう思いつつもあたしはデータフォルダを開き、こないだお姉が勝手にあたしのケータイで撮った自撮りを見せてあげた。


「は?これお姉?」

「そうそう」

「俺、名字の姉は2、3回しか会ったと言うか見たことしかねぇがそんなんじゃなかっただろ?」


お姉は現在、就活に向けてインターンとかなんか色々がんばってるらしい。そして、就活ってことであの派手な髪色が暗くなり、カラコンからディファインになり、化粧も就活向けの化粧になった。

分かりやすく言うとギャルから女子アナ風になったのだ。


「って言っても就活デーのときだけそのメイクに髪型だよ。オフのときは相変わらずの化粧だし前髪もかきあげてるから」

「あービックリした。似合ってるけど違和感あり過ぎて似合ってないもん!」

「俺なんかイメチェンしたこと教えてくれへんくてな?待ち合わせしたときに目の前現れてー可愛いけど誰やねんて思って、無視してたらおもっきし肩パンされたで」

「あ、俺も。俺は髪の毛引っ張られたぜよ」

「…なんつーか、お前らに聞くエピソードがバイオレンス過ぎて想像つかねぇ」

「でもお姉すごくいい人だよ。昔はよく化粧教えてもらったし?たまーにイケメンとか金持ちと合コンさせてもらったし?」

「は?」


みっちゃんの発言に跡部がすごく機嫌悪そーな顔をした。当たり前だ、うん。


「あ!ついうっかり言っちゃった」

「言っちゃったじゃねぇーよ。ま、昔だしいいが、そういう話は女の集まりの時だけにしとけよ」

「りょうかいでーす。けーご大好き」


そう言ってみっちゃんは跡部の腕に抱きついた。ちゃっかりラブラブしてるやん!


「ちゃっかりラブラブしてるやん!って、名前ちゃんどないしたん?そんな顔して。あ、仁王とハグしたいん?」


ちげーよ、侑士くんと一言一句同じこと思ってたから自分にドン引きしてたんだよ。そんなことは言えないのでノリでそーだよとテキトーに返しといた。



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