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昨日のフェスは光くんとバンドTシャツおそろの買おうと提案したら速攻却下された。

光くんが好きなバンドのグッズ売り場に向かってたから無理矢理腕を引いてパパのグッズ売り場に行ってパパの顔がドーンとプリントされてるTシャツを買った。パパのライブTシャツはおしゃれで普段着でも着れるけどこれだけは着たくないてか着れないと思ってたやつを敢えて買った。


「ちょ、ほんまにこれ着るん?俺は別にええで、おじさんおしゃれにプリントされてるし。おじさんは男としてリスペクトしてるし」

「ちっ」

「何なん?俺が嫌がると思って買ったらそうでもなかったから悔しいんか?ちなみに名前は着たくないってか」


くやしいくやしい。くやしいけど買ったから仕方ない。あたしと光くんはそのTシャツを着て全力でフェスでうええええいと暴れ倒した。

今回はあたしと光くんのお目当てのバンドがいたからバックステージに行く気満々だったんだけどパパにバックステージのパスを貰うのを忘れてたりパパが電話に出てくれなかったりなのでバックステージに行けず、全力でフェスでうえええいと暴れ倒した。

パパのMC中にオーディエンスがパパの名前を叫ぶ中、光くんと電話出ろやとかセミだけじゃなくて電話も取れやとか叫んだのは2人だけの秘密だ。

ママの実家をバイバイし、今日はパパの実家へ。ママの実家はどちらかというと都会な方だけどロッカーなパパの実家は大阪でものどかーなところ。田舎だ。あたし的には田舎だけど光くんにパパの実家を教えてあげたら高級住宅街やんけって言われた。でも買い物するのにも車が必要だからだるぽよ。


「わん!」

「わ!犬だ犬!」

「名前ちゃん、犬じゃなくてぴんく」

「ピンクちゃん!」

「そーそーぴんくちゃん」

「ばぁちゃんなんでぴんくちゃん?」


おばあちゃんと犬がお出迎え。ちなみにじいちゃんはパパの妹に買ってもらった電動自転車で近くの山に行ったらしい。んーロックだ。ちなみにロックな息子ちゃんのパパは昨日の余韻がやばいらしく爆睡。ママは相変わらずの甲子園。

そしてばあちゃんは最近飼った犬を紹介してくれた。なんでぴんくか聞いたらあたしがピンク色好きだから。そしてなんとおばあちゃん、あたしがこっちに来るのに合わせてこの犬を飼ったらしい。孫愛が素晴らしい。


「はい、いってらっしゃい」


ばあちゃんがあたしが散歩行くのを想定して買ってきた麦わら帽子をかぶってぴんくとお散歩。

麦わら帽子、どーせそこらへんのホームセンターで買ったやつやろと帽子を脱いでタグをチェックしたら帽子といえばここ!っていうくらい有名な帽子屋さんだった。てかばあちゃんここのブランド知ってたんだ。

もう1度かぶり直してぴんくとお散歩。犬と散歩なんてみっちゃんちのあいつぶりだから緊張する。てかあたし犬のウンコなんて踏んだことはあるけど処理したことはないぞ。なんとかなるか。


「ぴんくー」

「…」

「ぴんくー」

「…」


そうか、こいつの名前を呼んでも反応してくれないのは、まだ自分がぴんくと自覚してないのか。納得。


「あ」


暇なので雅治に電話。ワンコールで出てくれた。


「もしー」

(よ)

「今ねーぴんくとお散歩なう」

(ぴんくて誰?)

「ばあちゃんがあたしのためにわんちゃん買ってくれたの」

(ほー種類は?)

「んーあんまり犬の種類詳しくないから分からないけどちっちゃいよ」

(そりゃ最初は小さいぜよ)

「あーそっか。そうだよね」

(なぁ)

「んー?」

(また黒に戻した)

「え?まじ?」

(まじまじ。もー金髪飽きた。なんか黒の方がしっくりくる)

「へーあたし雅治の金髪好きだったよ」

(銀と黒と金なら?)


んー雅治の髪色は銀が1番長く見てたから1番しっくりくる。あーでも、やっぱり黒なのかな?でもあいつ浮世離れした顔してるし金髪も似合うっちゃ、似合う。


「んーどれも似合うから雅治の好きなやつでいいと思うよ」

(名前逃げた)

「ふふ。ばれたぁー?」

(ばれとる。あ、多分名前がこっちに帰ってくる日?)

「うん」

(跡部、ちーとだけ帰ってくるらしい)

「え、まじ?みちゃん言ってなかったよ」

(サプラーイズやろ。みっちゃんもイギリスじゃ。だからまた空港まで迎えに行こ)

「うんうん!じゃあー名前ちゃんのお迎えもよろ」

(おん。また新幹線の時間教えて)

「うん、分かったー」

(帰ってくるときパパさんママさんも一緒に空港まで行ってもええかのぅ)

「いや、パパさんはまだ大阪にいるみたい。同窓会に行くみたいでママも向こうの友達と女子会だってさ。だからあたしだけ明日帰る」

(は?明日?)

「うん、明日」

(明後日じゃないん?)

「明後日はパパとママ。あたしは明日だよ。明明後日バイトだから」

(あーパパさんにいつ帰るか聞いとったから勘違いしとった。新幹線こっちに着くのいつ?)

「んー4時頃かな」

(それなら行けるから迎えに行くぜよ。)

「やった!ありがとう」

(夜からレセプションパーティーとやらがあるんやけど行く?)

「え!いいの?行きたい!でも雅治」

(ん)

「他の誰かと行く予定だったんじゃないの?」

(5人ぐらいで行く予定やったから1人くらい抜けたってええやろ)

「そーだね。向こうで会えるし」

(そそそ。じゃ、また明日新幹線乗る前に連絡よろ)

「おけおけ、じゃっ」


電話を切って散歩再開。ピンクは散歩に飽きたっぽい。だって歩くペース遅いもん。犬飼ったことないから分かんないし暑いしあたしも飽きてきた。

なんか歩いてたら犬も入れるっぽいカフェを発見。田舎でもなんかこーいうカフェとか雑貨屋が充実してて街並みも可愛くて好きだ。駅から遠いのは嫌だけど。

カフェに入ってアイスコーヒーとクッキーのセットを注文。ピンクも暑そうだし他の犬も飼い主におしゃれなカップケーキを食べさせてるからあたしもそれを注文。

食べてる姿が可愛くて写メを撮って雅治に送ってあげた。しかし既読がついただけで返ってこない。

犬ってちやほやされて羨ましいな。あんまり動物を愛でないあたしにでさえ可愛いといわれ少し高いカップケーキをゴチになってるんだからね。

でも犬だと好きな人とデートできないもんね。手繋いでパーティいけないもんね。好きな服着れないし、笑うことはできても大爆笑できないしね。うんうん、人間でいいや。



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