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大阪生活2日目。今日は朝からパパとママは親戚を連れて引き続き甲子園に、あたしは光くんの宿題を見てあげてるのだ。いやいや、大学に夏休みの宿題がないのはスバラシイ!


「は?こんなん分からんの?なんでも教えたる言ーたから聞いたのに。カスやん」

「だって!それ数3じゃん。あたし理系じゃないから数2までだよ」

「早よ言えや。いややけど白石さんに聞くか」


いややけどをやたら強調する光くんは携帯で白石に電話を掛けた。英語と古文なら教えれると言ったらとっくの昔に終わったわと返され撃沈。あたくしの役目は終わった。


「あ!名字来とったん!久しぶりやん!」


白石は光くんに来いと言われて2分くらいで来て少しビビった。いくらなんでも早すぎおすぎ。


「あぁ、おれん家なー中学んとき引っ越ししてん!光の家の裏辺りに」

「あーだからこんな早くに」

「そうそう。あ!名字、俺なー言うの忘れててんけど大学なー東京やねん。今は盆やからこっち帰ってきてるけど」


え!まじ!大学名を聞くと顎が外れそうなくらい賢い大学だった。そーいえば白石賢かったもんなぁ。あたしの通う大学を教えたらこないだそこと合コンしたわと言われた。


「えー白石さん、彼女おんのに合コンすか」

「えーそれはやばすぎおすぎ」

「やばすぎおすぎて何やねん。や、彼女とは5月に別れた」

「まじっすか。俺別れへん思てたのに」

「え?どれくらい続いてたん?」

「4年やで」


遠距離なってもーたし環境かわったし、なんやかんや忙しくて連絡返すん段々減ってなー最初は早く会いたいなー寂しいなーて思っててんけど段々それが薄れてってこのまま付き合っててもあかんなーて思って別れてん。

4年も付き合ってたのに環境が変わるだけで別れんのか。あたしらは遠距離じゃないから、あーでも何が起こるか分かんないから安心してられん。雅治さんからLINE返ってきてないし。あ、雅治のお母さんがあいつのケータイもらったけど雅治がまだ帰ってきてないて言ってたな。


「そーや!今から甲子園行こーや!」


今日は関西同士の試合と沖縄もあるから人多そうやし盛り上がるで!と白石が興奮気味で言ってきた。

朝からママに誘われたけど暑いから光くんと断ったんだよね。光くんを見ると誰が見ても行きたくなさそうな顔をしている。


「ほら、名前行きたくなさそうな顔してんで」

「いやいや、光くんの方が」

「ほら2人ともそんなん言ーてんと行くで」


いまなら第3試合間に合うから!そう言って白石に玄関まで引っ張られて靴をはかされた。


「白石、あたし財布持ってない。化粧品にカバンも。あ、日焼け止めにサングラス」

「俺もっすわ」

「グラサンと日焼け止めは俺の貸したる。化粧品なんかいらんいらん。グラサンしてんねんから。で、電車賃と昼飯代くらいおごったるから行くで。自分ら絶対荷物取りに行ったら1時間は帰ってこやんやろ」


絡むのは小学生以来やのに分かってるやん、白石…!て思ってたら、2人とも似過ぎやねん、いとこやねんからもーちょい似んでもええやん。謙也んとこアホと変態やん。似てるよーでカテゴリーちゃうから似てないやん。でも自分ら面倒くさがり過ぎんねん。ばあちゃんにスイカの種とってもーてるらしいやん。幼稚園児でも自分で取ってるで!

駅に向かいながら俺の理想のいとこについて語られた。自分らいとこってより兄弟やんってめちゃくちゃ言われた。知らんわ。

甲子園への行き方は梅田から1本で15分くらいで着いてしまう。案外近い。夏休みだから梅田は人がわんさかわんさか。


「2人の切符買ってくるから大人しく待っときや」


白石に右手を掴まれ、無理矢理光くんと手を繋がされた。白石はそれを見て微笑ましいわーと言って切符売り場の方へ行ってしまった。

ぼけーと白石のことを見ていたら手に凄い衝撃が。何事と思ったら雅治があたしと光くんの手をチョップしていた。そして雅治の手があたしの手を握ってきた。ん?まさはる?


「え、仁王さん、なんで俺の手まで繋いでくるんですか」

「ピヨ。2人が白石に大人しく待っとけと言われとったから俺も大人しく待っとらんといけん」

「あーね」

「いやいやいや!なんで光くんは納得してんの!驚かないの!で、あんたはなんでそこおるの?」


あたしが激しめにツッコミを入れると雅治がすごく悲しい顔をして話してくれた。

雅治は一昨日、あたしとご飯を食べた後仕事仲間と仲良くどんちゃん騒いだあと1人でルンルンで帰ってたけどあたしとプチ喧嘩したのを思い出して悲しみブルー。

そんなときにアイドルのマネージャーには遭遇。しかし雅治とアイドルのマネージャーは一回しか会ったことがなかったので向こうから声を掛けてきたらしい。マネージャーは雅治が悲しそうな顔をしてたのでどうしたの?と聞いてきて理由を話したらマネージャーがきっと愛想尽かされたわ、私が慰めてあげると言ってきたらしい。

顔がだんだん近づいてきて、すごーく怖くなって背負い投げして逃げてきたらしい。そしてあたしに謝ろうと思いポケットの中のケータイを取り出そうとしたらケータイをどっかで落としてしまった。夜中にアポなしであたしの家に行って謝るのはあれだし、先に大阪に行って待ち構えて謝ろう!となって夜行バスで大阪へ。


「んで無事に会えたわけじゃ」

「へー仁王さんやばすぎおすぎ」

「あ、光くんあたしのパクった」

「ええやんけ。てか仁王さん大阪ついたん昨日ですよね?昨日何してたんすか?」

「あ、ほんとだ。何してたの?寝てたの?」

「ゆ、USJ」

「は?え、ゆー「財前に名字!切符て仁王くんやん。ちょ、仁王くんの切符買ってくるから待ってて」


え、白石も雅治さん来たの驚かないの。関西人リアクション薄っ。薄いて。



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