06


新大阪に着いた。改札口付近で名字家御一行と書かれた紙を持っていた侑士くんがいた。ん?侑士くん?


「あー侑士くんありがとう」

「ママさん、2日ぶり。荷物持つで」

「ありがとう」

「侑士くん車どこに停めたの」

「あ、パパさん!そうそう忘れとった!30分無料のとこ停めてん。だからちょっと早足で」


30分オーバーなったら500円かかるねんって侑士が教えてくれた。それよりもなんで侑士くんが迎えに来てくれたのかが意味分かんない。あたしてっきりばあちゃんが迎えに来てくれると思った。

パーキングに着き、侑士くんにこの車やでと言われた車は最近雅治と将来結婚して子供産んだらこの車ね、と約束していたキャサリン妃も乗っていたあの車だった。

車に乗ろうとしたら助手席のドアが開き金髪の男が降りてきた。


「あ、初めまして!侑士の従兄弟の謙也です」

「あー侑士くんからよく聞く謙也くんね!」

「ママさん噂で聞いてたけどめっちゃ美人ですね!パパさんもめっちゃかっこいい。俺たまにラジオで曲聴いてます!後で写メ撮ってください!」

「いいよいいよ、ありがとう」


ママとパパは褒められてデレデレしてる。あたしも褒めろやと謙也くんを見つめた。


「あ!名前ちゃん?初めまして!白石とか財前に話よー聞いてたからめっちゃ知ってんで!」


謙也くんから聞いたあたしの情報は正しかったけど褒められた気は1ミクロンもなかった。

だって、

「小学校のとき牛乳早飲みランキング校内1位やってんやろ!」
「トイレ出るんめっちゃ早いんやろ!」
「寝んのめっちゃ早いんやろ!のび太並やねんやろ!」

こいつに早いんやろ!しか言われてない気がする。


「謙也早いのめっちゃ好きやねん」

「あーね?」

「せやねん!だから名前ちゃんめっちゃリスペクトするわ」


車内の会話はあたしがなんで侑士くんらが迎えに来た理由を聞き(財前の兄ちゃんに1万あげるから従姉妹ら迎えに来てこい言われてん!)話の流れで謙也くんはなんでも早いのが好きらしく中学の頃は浪速のスピードスターと呼ばれていたらしい。

謙也くんは誇らしく言ってたけどスピードスターてまあまあダサい。


「え?じゃあ謙也くん早漏なの?」


ママの発言で車内は一瞬だけ変な空気になった。そして侑士くんのそーなん謙也?で謙也くんが早漏なのかという話題に。

最初はそれはみんなと同じぐらいや!言い張ってた謙也くん。しかしパパとママがぐいぐい攻めたら遅漏と発覚。

申し訳ないけどこれはめっちゃ笑った。


「え、待って。なんでそれ俺に言うん?」

「別にええやん。なんか悪い?」

「名前がそんなん言うから俺謙也さんと彼女さんヤってんの一瞬だけ想像してもーたやん」


おばあちゃん家に着くと光くんと竜ちゃんとおばあちゃんがお出迎え。あたしらが来たということでおばあちゃんとおじいちゃんと竜ちゃんはどっかにお出かけ、パパとママは荷物だけ置いて侑士くんと謙也くんと甲子園へ。あたしと光くんも誘われたけど疲れてるから断った。

2人でテレビで生中継されてる高校野球を見ながらばあちゃんにもらったスイカを頬張った。ばあちゃんはあたしと光くんがスイカの種を取るのが嫌いだからスイカが嫌いと理解してくれてるので丁寧に種まで取ってくれてる。


「正常位?バック?」

「バック」

「あーあたしもしっくりきたのバック!」

「ほらまた想像してもーたやん」

「ええやん妄想はタダやで」

「タダでも見たないわ」

「てか光くん彼女おらんの?」

「え、あー」

「あ?」

「いや、なんもない」


そう言って光くんはスイカを頬張った。あやしい!あやしい!なんか絶対これは隠してるわ。


「どっち!いるの!いないの!」

「絶賛片思い中や」

「光くんがかっ片思い!ひゅー」

「こんなんなるから言いたなかってん」


光くんの顔がスイカのように顔が真っ赤になった。光くんも可愛いとこあんじゃん。

その絶賛片思い中の方の話を聞こうとしたらアイドルからの着信。ちっ


「へーい。どーしたの?あたし大阪だから会えないけど」

「名前ちゃん!私ねさっき事務所の人から聞いたんだけど、聞いただけだから詳しくは知らないよ」

「おんおん。分かった」

「昨日ね、マネージャーが仁王くんのこと追いかけ回してたみたいなの」

「ん?」


なななんと昨日雅治が背負い投げをした相手とはアイドルのマネージャーさんだったのだ。

元々広告とか見てて雅治のことイケメンだなーて思ってたくらいだったらしいんだけど顔合わせの時に初めて会って恋に落ちたらしい。アイドル的にはただのファンだろうとしか思ってなかったんだけどマネージャーはガチで恋してたみたい。しかし雅治にはあたしという彼女がいるし強行突破だ!と酔っ払っていたのもあったけどあんな行為をしちゃったみたいだ。そして今日いなかったのは病欠と聞いていたが本当は失恋したからってのと雅治に背負い投げをされて腰を痛めたから休んだらしい。


「てかなんでこのことが発覚したの?」

「昨日その現場をうちの事務所のスタッフの人が見てたみたいで本人に問いただしたら発覚みたいなー?」

「へーじゃあマネージャーさんこれからどうなるの?」

「どんな処分かは分からないけど私のマネージャーはクビになったよ。だからさっきから違う人になった」

「あ、そうなんだ」

「そーそー!だから名前ちゃんが大阪から帰ってきたら顔合わせしようね」

「うん!分かった!じゃーねー!」


電話を切って光くんを見ると今あったこと話せという顔をしていた。だから事細かく教えてあげた。


「めっちゃおもろいやん」

「でしょ?まぁ雅治にとってはトラウマかもしれないけど」

「仁王さんから連絡ないん?」

「あいつケータイ落として友達が持ってて、そろそろ本人の手元に戻ってるはずなんだけど」


まぁまた本人から連絡来たらでいいや。それより高校野球だ。ああー栄光はー君にかがやーくー

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