「あわわわわわわ。あーあーあー」
「名前、大学生なったんだからジッとしなさい」
「そーそー見てるだけで恥ずかしい。それよりもパパが名前って言ってるの違和感ありありー」
「あたしあんまり意識したことないけど初めてかも。パパ言ったことある?」
「んーあるけどないに等しいかなー」
今日はパパがプロデュースのアイドルとの顔合わせの日。あたし、アイドルのブログ書いちゃうんだ。ってことはあたしアイドル?んーちがうか。
「てかなんでお姉も来るの?」
「えーだってどんな子か気になるしー侑士にドタキャン食らったし。パパがオッケーだしたから」
「あ、まーくんも来るよ」
「は?あいつ今日生理2日目ぜよーとか意味分からないこと言ってたから無視してたけど来るの?お姉も雅治もおもしろがって!」
もーどいつもこいつも!まぁ今日顔合わせするためのお店はあたしが行きたかった和食屋だからいいけど。ここのお店はなかなか予約がとれないし高いから行けてラッキー
アイドルは今日は挨拶回りをしてからこっちに来るらしいんだけど道が混んでて来るのが少し遅れるらしい。
「まーくんそろそろ来るってLINEきたよ」
「あ、そ」
「本当だ。俺んとこにもLINEきた」
ん?ん?ん?LINE?お姉とパパだけ?一応あたしのとこにもLINEきてるか確認しよーんー?生理痛つらたん??
「名前、まーくんからきてた?」
「うん、来てたよ。生理痛つらたんって」
「あれだよ、サプライズ。俺もママによくした」
「生理痛とか言ったことあんの?」
「男は生理来ないよ」
うん、そうだね。そうだよ。パパはボケてくれないから変な会話になってしまった。
「名前、今日はお仕事だから俺はお前のことをチビとは言わない」
「うん。名前って呼んでもいいの?」
「うん。向こうには俺の娘って言ってるから」
「お姉は俺の娘でいいの?」
「本当は俺と名前だけでいいしー」
「こいつも娘ですって言ったら冷やかしって分かられるかもしれないよね。あ、私パパのマネージャーさんの部下のふりしとくね!部下とかいないけど」
「あ、お姉それいいじゃん!」
お姉は急遽来れなくなったパパのマネージャーさんの部下という設定に決まったところでアイドルがやってきた。
アイドルは写メで見たときよりはあれだけどまぁかわいい。わーきゃーかわいいー!ってよりは、かわいいって感じ?うん。
多分かわいいってならないのは私服が少しダサいからかもしれない。これから芸能界に入るからこの子は洗練されて垢抜けておしゃれになって可愛いくなることを願おう。
「ねぇ、ぜーったいさっき店の前で電話してたのニオウマサハルくんだよ!同じ店でごはんだよ!やばいよ!」
「いまその話はいいでしょ。ほら挨拶しなさい。」
席に着いた途端アイドルはカリスマロックスターなパパやあたしらに目もくれず店前で会ったニオウマサハル…仁王雅治?雅治?!こいつ雅治のファンなのか。
自己紹介をしようとした瞬間、雅治ご登場。アイドルが騒ぎ始めた。
「え?なんで?なんで仁王雅治くんが?え?」
「あー俺こいつの彼女やから今日の話面白そーやったから来たんじゃ。彼女の隣に座ってるこいつの姉ちゃんに誘われて。ちなみに俺のブログとかもこいつが書いてくれてるけぇお前さんと仲間なり」
「え、あ」
雅治が本当のことをペラペラ話すからあたしらが散々考え抜いたお姉の架空の設定を自己紹介する前にナシにされた。お姉とパパはにやにやしてるけどあたしはそれどころじゃない。だって雅治があたしのこと彼女とか言うからアイドルが睨んできたもん。
そっから静かーに自己紹介が始まり淡々と話が進んだ。あたしとアイドルとアイドルのマネージャーさんでLINEグループを作り、アイドルがブログで書きたい内容をそこのLINEグループに載せてあたしがアレンジしてマネージャーさんに確認を取ってもらうという流れにしようと決めた。
アイドルも次の仕事があるらしく連絡先を交換して解散。お姉はこのままパパと飲むからまーくんと出て行けと1万円を渡され店を出された。
「ねぇ」
「ん?」
「生理って何?」
「んー」
さっきの店でそんなに食べれなくて余計にお腹すいたので雅治と渡された1万円を使って焼肉。
生肝を軽ーく炙って胡麻油をつけてパクリ。あーおいしい。最高。1万円あるからもう一回頼もうか。
「何?」
「名前ちゃんを驚かせたかった的な?」
「でもさ、お姉とパパにはLINEしてんじゃん。あたしだけ生理って何?むかつくんだけど」
「ごめん」
「今度から意味分かんないこと言わないでよ」
「おん」
「てかさ、あたし的にあのアイドル、雅治狙いそーだから気をつけてね」
「任せんしゃい。ハニートラップには引っかからんぜよ」
かかるなら名前だけでええ。とあたしを喜ばせるために言ったと思うけどまあまあ寒いことを言われた。とりあえず、ありがとうと返しといた。