好きだったアイドルとか無名時代のだったときの人気モデルが載ってる雑誌、落書きがお気に入りの教科書にブス過ぎて誰にも見せたくないプリクラがたくさん貼られたノート。あ、小学校の時に好きだった漫画も。全部正直どれも捨てちゃってもいいけど見たらその時の思い出が引き出しのように溢れ出てくるから捨てられない。
「だから捨てるか残すか困るんだよねぇ」
「ほれほれ捨てんしゃい」
「さよならあたしの思い出たちよ。あ、やっぱちょっと見る」
「はぁ。明後日引っ越しやのに服系しかダンボールつめとらんから一冊だけじゃ」
「じゃあ、プリ帳にする」
雅治の股の間にずんっと座って汚い字で名前ズぷり帳!と書かれたノートを取ってみることにした。雅治が俺も見るんかと嘆いてたけどええやん?
「これいつのん?」
「えーと多分中1の冬かな。雅治いないし」
「あー俺ら中2からじゃったなぁ」
「もー5年?」
「んー5年じゃ」
「あれから5年か。早いね」
「ん。早い」
ピラピラと付き合って初めて撮ったプリクラを探していたら雅治に腕を掴まれた。
「なに?気になるプリクラあった?」
「いや、やっぱそれは捨てるのやめて新居で見ん?」
「え?なんで?あ、ポップテーン読みたいの?」
それも違うと言いあたしが持ってたノートを取り上げて勉強と書かれた段ボール箱の中へ投げ入れた。
「しばらくきゅーけー」
雅治はあたしを抱き枕のように後ろからぎゅーと抱き締め、こてんと横になった。
「もー明後日だよ?引っ越しは」
「そんなんすぐ終わる。だから今を大事に」
「大事にねー」
そっかそっかと雅治の言うことに納得しまくったあたしはよいしょと反転し雅治の方を向いた。
「んじゃ、少しだけね。今を大事にってことでぎゅー」
言葉の通り雅治をぎゅーと抱き締めた。部屋を片付けながら荷物整理してるから冷房をつけずに扇風機だけなので暑い。お互いの体温ががっちんこして少しムシっとする。でもいいかも。好きかも。暑くても心はなんか気持ち良い。
「キスしてもええ?」
「聞かなくてもするくせに」
雅治はあたしの腰に手を移動させて、あたしは雅治の首に腕を回して。お互いの顔が近付いて。くちびるが重なった。雅治に下唇を吸われた。だから上唇を吸った。舌を吸われた。だから舌を吸った。
あたしも雅治もディープなキスはあんまりしないけど今日はしたいかも?なんでだろ。暑いからかな。暑いからおかしくなってんのかな
「オトナなキスじゃな」
「…オトナなキスって響きエロいね」
オトナなキスか。エロい響きだ。イケナイコトしてるみたい。大学生だもん。オトナなキスしてもいいよね。中学生だってやってるし。んー暑いから少しおかしくなってるかも。
「もっとオトナなキスしたいぜよ」
「何度も言われたら恥ずかしい」
「うれしいくせに」
「だまってばか」
2人でお互いの頭を掴んで髪の毛がぐしゃぐしゃになるくらいオトナなキスをしてしまった。キスしてて眩しいと外を見たら夕方だった。すごく時間が経っていて、すごく恥ずかしくなってしまった。子どもに戻った気分。
「もーこんな時間か」
「だね。まだ片付いてないからママに怒られる」
「今日はオールか。んで明日までに終わらせんといけんのぅ」
「えー寝たい」
「じゃ、まーくんが明日特殊部隊を派遣しちゃる」
「まじ?」
「まじまじ」
「やった!まーくんすきー」
「俺も名前ちゃんすきー」
明日雅治が派遣してくれる特殊部隊とはなんだろな。なーんだろか。
結局片付けは明日にすることにした。しかし寝るとこまであたしの荷物で占領されてたから雅治の家にお泊まり。ラブラブチュッチュな夜になりましたとさ。