小説 | ナノ
▼ 主人公が嫉妬する話



「ムカつくムカつく。死ね死ね仁王。」

「何でそんなに荒れてるの。」

「みっちゃん聞いてよ!」


それは日曜に行われた新人戦での出来事。仁王は相手が棄権したから一回戦不戦勝で次の試合まで時間が空いたから2人でブラブラすることにした。

最初は歩いてるだけだったんだけど、仁王の気になる選手が試合をしてたのでそいつの試合を見ることにした。

あたしは暇だったので仁王に話し掛けたんだけど仁王は試合観戦に集中してて無視。それが何度も続いて少し腹が立って来た時に事件が起こった。


「あのー立海の仁王くんですよね?写真撮って下さい!」


他校の女子テニス部にちやほやされ始めたのだ。あたしが何回話し掛けても無視だったのに違う女の子に話し掛けられるとすぐに「ええよ。」って!何がええよやねんって思ったけど彼女としての貫禄を見せるために怒りを抑えた。


「山田、カメラ。」


は?あたしはカメラじゃねぇわ!って言いたかったけどぐっとガマンして女の子からカメラを受け取って怒りの幸村スマイル並みの笑顔で「ハイチーズ!」って言ってあげた。

仁王と女の子が写真を撮ってるのを見て私も私もとあたしへカメラを渡してきて20人以上も撮ってあげたと思う。

次の試合があったから撮影会は終わりにして仁王と次の試合があるコートへ特に会話もなく向かった。


「帰りに仲直りとかしたの?」

「帰りは迎えに来てもらったから仁王とは話してないよ。てかさ、あたしに何も言わないんだよ。せめて写真撮ってくれてありがとうとか、お疲れ様とか?言ってくれたら今のこの状況は変わったかもだけど。」

「ふーん。何で仁王そんなに写真撮られてるの。」

「多分ね、今月仁王テニスの雑誌でインタビュー受けてたからかもしれない。」

「あーね?仁王一応イケメンの部類に入るからね。」

「仁王なんてプリプリぶりっ子で嫌いな食べ物直ぐあたしに食べさす幼稚園児みたいなやつなのに!」

「今回はガチで怒ってるのね。」

「当たり前だよ!思い出すだけで腹立つ!今日部活行きたくない!仁王と同じクラスじゃなくてよかったよ!」


あたしはA組で仁王はF組。同じクラスだったら登校拒否してたかもしれない。


「みっちゃんはなんで一緒に仁王にムカついてくれないの!」

「確かに聞いてたらムカつくけどそれよりもヤキモチ妬いてるなまえが可愛くて。」

「え?これってヤキモチ?」

「どんなに恋愛に興味ないやつが聞いてもそれはヤキモチだって思うくらいそれはヤキモチだよ。」

「えー!どうしよ!」


みっちゃんにそれはヤキモチだと言われた瞬間、仁王への怒りはどっかに消えてしまい恥ずかしくてあたしが消えたいと思ってしまった。


「みっちゃん消えたいよ。掃除箱入っとく。」

「だめ。こないだ掃除箱に入るの禁止って先生に言われたでしょ。」

「うーあれだよ、こないだ古典で習った露になって消えてしまいたいってやつ!」

「それ意味ちがうからね。」


とりあえずあたしは机の下に潜って消えることにした。


「みっちゃん!あたしは消えたからね!」

「ふーん。丸見えやけど消えとるんか。」

「に…お?」


みっちゃんの姿があたしの視界から消えてその代わりに仁王の姿が。仁王は「何しとるんじゃ。」と座ってあたしの視線に合わせてきた。


「何で昨日勝手に帰ったん。行きに一緒に帰ろって約束したぜよ。メールも電話も無視するし。教室来たら机に潜っとるし。」

「だって仁王むかつくもん。」

「何で?」

「何でって言われても。」


言うの恥ずかしいし、言ったら人生オワリだ。いやだいやだ、仁王消えてよ、チャイム鳴ってよ。ダメだ、みっちゃんに愚痴るために今日はスーパーウルトラ早く来たんだ。ってことは仁王も早く来た?


「仁王、今日早いね。何で?」

「俺の質問無視か。まぁええわ。だって山田から連絡来んくてソワソワして早く来た。」


下を向いて話す仁王が可愛くて可愛くてさっきまで仁王に怒ってたのが嘘みたいになくなってしまい自然と仁王の頭に手が伸びてふわふわと撫でてあげた。


「んじゃ俺の質問にも答えんしゃい。」

「んーとね、」


昨日話し掛けても無視されたこと。あたしの問いには無視してたのに他の女の子の問いには応じたこと。あたしに一言礼も言わずにたくさんの女の子と写真撮ったこと。思ったこと全部話した。


「それはヤキモチと捉えてええのですか?」

「うん。」

「可愛い。」

「他に言うことあるでしょ。」

「山田のこと無視して他の女の子と話してごめんなさい。そんで写真撮ってくれてありがとう。これからは気をつけます。」

「んふふ。よしよし。」


仁王のセットされた髪の毛をわしゃわしゃと撫でてあげた。セットされてあったから撫でるとぐしゃぐしゃ。


「でもなんで仁王はあたしの話無視したの?」

「だって試合してたやつらのことイケメンイケメン言っててムカついたなり。」


なんだなんだ仁王もヤキモチ妬いてたんだ。


「ごめんね仁王?」

「仲直りのちゅー」

「ここ教室だから恥ずかしい。」

「誰もおらん。はよせんと誰か来るぜよ。」


あたしは周りを見渡し誰もいないと確認して仁王の頬を手で包んでちゅっと仲直りのちゅーをしてあげた。


「これで仲直りぜよ。」

「ではまずは今日は一緒に昼ごはん食べて一緒に部活行って一緒に帰りませんか?」

「それは是非お供させていただこうかのぅ。」prev / next

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