「どこ行くんだよぃ。」
「職員室。」
「万引きでもしたのかよぃ。」
「ちげーわ、あほ。あたしも知らないけど顧問からの呼び出しだから部活関連かな?引退したのに。」
「ふーん。」
やっと10月に入った。まだ暑い。たまーに涼しい時があるけど。
久々に顧問からの呼び出しで職員室。部活やってた時はよく職員室に行ったなーそれ以外で職員室はノートの提出と、ああ、上履きがボロボロ過ぎて呼び出されたんだった。懐かしい。
「あ、呼び出し?顧問?」
「うん、一緒かな?」
職員室の前に行くと幸村が扉の前に貼られている先生の机の場所が書いてある地図を見ていた。どうやら幸村も呼び出しらしい。幸村もいるということは怒られない。ほ。
「久々に職員室行くから机どこだろって。」
「確か分かりにくいとこだったよね。」
立海の職員室は教科ごとに分かれている。顧問の担当教科は社会で社会の先生達の職員室は地球儀や地図などでごった返していてややこしかったな。
「失礼します。」
幸村といざ職員室へ。てくてく歩いて顧問の机へ。顧問は何かを書いていて「先生。」と呼ぶとぶるっと震えてこっちを向いた。何で震えたんだろ?会いたくて?会いたくて?
「何の用?社会の職員室遠いから大変。」
「んなこと言うなよ。で、毎年2学期の終業式に立海の新聞みたいなのくばるだろ?あれに部長とマネージャーのお前らにインターハイの時のこと載せるのが決まったから2人に書いてもらおうと思って。」
「えー!あたし無理だよ!現文の先生のお墨付きだよ。幸村があたしの分まで書いてくれるよ。」
「お前も書けよ。俺そんなに書けない。」
「200字だからよろしく。今週までに出してくれ。」
はいっと先生に原稿用紙をもらって職員室を出た。幸村と書きたくない書きたくないとグチグチ言った。そんなの真田とか柳が書けばいいのに。あえて赤也に書かせたい。そんな愚痴ばっか。
幸村と分かれ、あたしへそのままBではなくA組へ。
「ね?お願い。」
「嫌です。」
「お願い!」
「嫌です。」
「お願いーやぎゅたん。」
「嫌です。」
早速やぎゅたんこと柳生に代理で書いてもらえるか頼んでみた。しかし無理だった。
「あたしの気持ちを書くからそれを柳生が丁寧な文章にするだけだから。」
「嫌です。」
「嫌です。ばっかじゃん。まーいいや。他にもいるから。じゃ。」
我らが参謀、柳のとこへ。事情を話すとオッケーをもらった。が、
「その代わり2週間後の2年の修学旅行のしおりをホッチキスで纏めてくれ。俺はちまちまやるより文を書く方がいい。」
「ホッチキスで纏めるだけでしょ!楽勝!じゃ、よろしく。」
「こちらこそよろしく。」
「あ、この事は内密に。」
「分かった。」
柳と交渉成立し教室へ戻った。丸井が反省文?反省文?っとニヤニヤして聞いたけどウザくて無視。あたしは反省文は1枚しか書いてないんだよ。しかもそれは丸井のせい!高1のときに丸井と授業中に消しゴム投げ合ってたら書かされたんだ。
放課後になり生徒会室へ。1人くらいなら友達を連れてきてもいいらしくみっちゃんを連れて来た。仁王は今日は仕事だからみっちゃん。みっちゃんも暇してたらしい。
「しつれーしまーす。」
生徒会室には誰もおらず修学旅行のしおりと書かれた紙がたーくさん。
「これぜんぶ纏めていくんだよね。」
「うん。そうだよ。」
「2年て何人いるんだろ。」
「3年で1000くらいだからそんぐらい?」
「えーやば。あ、でもこれ見て。ここにあるしおり沖縄だけっぽいから1000もないよ。」
修学旅行は国内国外と別れていて国内は沖縄か北海道。国外はアメリカかヨーロッパ。私たちがホッチキスで纏めるしおりは沖縄だからざっとみても300冊くらいか。それでも300。作文よりはいける。
「さーてお菓子買ったしやりますか!」
「いえーい!」
カチッカチッ。まずは真ん中にホッチキス。そして両サイドにホッチキス。地味に大変というか地味な作業だからつまらないというか。だらだらみっちゃんと会話しながらだから楽しいけど。
「てか今日久々に柳生と話した。あいつ拒否しかしないよ。」
「普通拒否しかしないよ。作文200字他人のはだるいよ。このホッチキスもだるいけどね。」
「柳は違うよ。」
「柳は文を書くのは朝飯前だからでしょ。」
「ふーん。」
カチッカチッ。話しては無言。話しては無言の繰り返し。すると生徒会室に来客が。
「へー真面目にホッチキスしてんじゃん。みっちゃんも。」
「どっから聞きつけたのよ。」
「C組の情報網舐めんなよ。それにお前と柳の組み合わせはいつも裏があるんだよね。」
ギクッ。さすが幸村プロ。ご名答だ。大抵あたしと柳がセットでいるときはあたしが何かをしでかそうとしている。そのしでかす内容は勉強関連か幸村関連だったけどね。そしてC組怖い。
「俺も菓子パ参戦する。」
「手伝ってよ。」
「いーやーだ。だって柳と交換したやつだろ?何で俺がするんだよ。」
「みっちゃんもしてるよ。みっちゃんは買われた身だけどね。」
「私みっちゃんは#name#にこのお菓子とさっき食べたアイスで買収されました。」
「ふーん。ま、修学旅行懐かしいな。俺らヨーロッパだったよな。」
幸村は仕上がったしおりをペラペラ。お菓子食べたら手伝わせようと試みるがあいつはしなかった。
「修学旅行過密スケジュール過ぎてみっちゃんと点呼前に寝ちゃってたよ。」
「俺は寝顔ドッキリした。楽しかったな。」
「お茶目なことするね。」
カチッカチッ。また話しては無言。話しては無言の繰り返し。幸村は誰かとLINEしてるみたい。機嫌が良い。
「じゃっ今からデートしてくる。」
「誰?」
「気になる。」
「クラスどこか忘れたけど可愛いで有名なカオリちゃんと。」
「あーあの子ね。あの子は可愛い。」
「丸井…」
「丸井がどうした?」
「いやっ別に!付き合ってるの?てか立海の女はNGじゃないの?」
丸井これ聞いたらショックかなぁ。まぁ恋愛対象よりは憧れのマドンナって感じだから大丈夫か。
「文化祭のときに声かけられて連絡先交換して今日が初。映画行ってくる。」
「また文化祭ラブかよ。私なんも、なかった。」
「みっちゃん。クリスマスまでには見つかるよ。」
「みっちゃん真田と付き合ったら?じゃー俺は行くね?」
幸村はルンルンで出て行った。てかまだみっちゃんと真田付き合うネタ続いてたのかよ。
「だから真田は無理なのに。幸村め。私は王子様みたいなキラキラした人がいいの。」
「真田はキラキラではないもんね。」
「ひしひしかな。なんかひしひしっぽくない?」
「んーあんまり分からない。」
カチッカチッ。気付けば6時過ぎ。無事に修学旅行のしおりホッチキス留め作業は終わった。
みっちゃんとピザまんを食べながら神社に寄って幸村の恋が失敗するように祈って帰宅。なぜかママとパパと侑士くんで食べた。
12時過ぎに幸村から(あの女無理。やっぱ立海の女は廃れてる。)ってLINEがきた。どうやらあたし達というかみっちゃんの怨念が幸村に伝わったみたいだ。
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bkm