02


部屋に荷物を置いてロビーへ。部屋は1人部屋。あたしの部屋よりも居心地良さそう。質が良いから当たり前だけど。ベッドで飛び跳ねた時まあまあ飛んだ。早く終わって遊びたいな。

ロビーにはもうみんないて跡部と幸村が今日の練習について一通り確認をしていた。あれ、確かあたしもその確認を一緒にするはずだったのになー仲間外れ?悲しいな。


「もしかしてなまえちゃん?」

「誰?って…ゆっああ!」


呼ばれた声の方を向くとにやにやしてる丸メガネの男が。あっこいつ…!


「ん?お前忍足と知り合い?」

「お、丸井か。久しぶりやなぁ。なまえちゃんとはなぁー」

「色々な知り合いだよ!!」

「色々って意味深な関係やな俺ら。」


益々にやにや度が増えて気持ち悪く感じた。鳥肌が止まらない。


「どんな関係だよぃ。気になる。」

「そうだよね。曖昧にしたら変な関係と思われるしね。愛人とかにされたらいやだしね。まじで死ねるわ。」

「俺のことミジンコみたいな扱いせんといてや。」

「いや、ゴリラくらいだから。」

「ゴリラもゴリラで嫌やねんけど。友だちとかの括りがええなー」

「あたしあんたのこと友だちとは思ってなかった。」

「おい、話逸らすなよぃ。早く言えよ。」

「お姉の元カレ。」

「え?」


丸井が驚くのも当たり前だ。お姉と侑士くんが別れたのは3月くらい。交際期間とやらはお姉にしては長い1年ほど付き合っていた。年下とかマジ論外と言っていたのにあたしと同い年の侑士くんを彼氏として家に連れてきたときはまじで驚いた。よく家に来ていてお姉がいてないときもよく来ていて少し意味が分からなかった。でも課題手伝ってもらったり部活での幸村のグチとか聞いてもらったからいい奴だった。


「世間ってせまっ!てか何で別れたんだよぃ?」

「俺ら仲良すぎてん。これって友だちちゃう?ってなってな。」

「てかなんであたしに俺もテニス部やねんって言わんかったの?」


一応知り合って1年は経ってるのに侑士くんがテニス部って知らなかった。あたしはテニス部って言ったのに。


「いつかはテニスで知り合うかなーって思っててん。そしたらここでまた再開したやん。おもろいやろ?」

「おもろいけどあたしがテニス部の話してたときとかニヤニヤしてたんでしょ。いつか会ったら驚くんやろなーって。それ考えると嫌だわ。」

「俺はお前が跡部と確認をしてたときに来てくれなくて嫌だったなー。確かロビーに来たら3人で確認するって約束したんだけどなー?」

「何で来ねぇんだよ。あぁーん?」


急に幸村と跡部があたしを責めにきた。本当はあの時2人の会話に入ればよかったんだけどね。でも…


「なんかね、仲間外れにされた気がしたんだよ?あたしのこと待ってくれたっていいのに。あたしの部屋ってみんなより遠いからここに来る時間だって遅いじゃん。」


あたしは美しい涙を流した。ぽろりと。


「おっおい。そこまで怒ってねぇんだ。お前がロビーに来た時に声をかけなかった俺らも悪い。」


跡部があたしの涙に少し焦っていた。しかし幸村は違った。


「跡部、こいつすぐ嘘泣きするから。」

「ちぇっ。ばれたか。」


美しい涙を幸村のジャージで拭いた。そしたら叩かれた。まぁ今のはあたしが悪いや。


「何年一緒にいると思ってんだよ。もっと上達したら?」

「でも跡部騙されたじゃん!」

「跡部は俺と違ってお前と知り合った期間が浅いから当たり前。」

「女の涙を見抜けねぇとはな。これからは気を付けるぜ。」

「じゃあそろそろ始めるか。」


幸村の一声でみんなは外へ。少し歩いたらコートが周り一面に広がっている。数えてみようと思ったけど意味がないからやめた。


「じゃ、ドリンク運んでくるわ。」

「食堂にドリンクが入ったタンクがある。今日は初めてだから俺もついて行く。」


跡部に連れられてあたしはドリンクちゃんを迎えに食堂へ。昼ごはんの準備の最中らしくすごーくいいにおい。


「ここにタンクがある。これをコートまで運べばいい。持てるか?」


タンクの重さを知るために試しに持ってみた。んー重すぎてフラフラしてしまう。


「じゃあ台車で運ぶか。この台車を使えばいい。」


跡部はそこら辺にあった台車を引っ張ってきた。勝手に使っていいのか分かんないけど使えるものは使っとけ、幸村がいつかあたしに言った言葉だ。


「よいしょっと。」


タンクを台車の上にゆっくり慎重に乗せた。よろけて跡部があたしのことを抱きしめるように支えてくれてっていう胸キュン展開はなかった。てか食堂に向かっている間に話をしていてこいつはあたしの王子ではなかった。なんか幸村みたいに小言言ってきそうな感じ?


「じゃあ行くか。」


そう言って跡部はスタスタ歩いてった。


「跡部。」

「あぁーん?なんだ?」

「跡部が押してくれないの?」

「お前の仕事だろ。」

「レディに優しくしないとモテないよ。」

「お前の仕事だろ。やれ。」

「ち。」


もし仁王っていうマイスイートハニーがいなくても跡部にはときめかない自信はある。


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bkm
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