03



「ねぇ、ごめんって。」

「…。」

「言い訳かもしれないけどさ、こんなことなるなんて思わなかった。」

「俺もまさかこんなんなるとは思わんかった。」

「だから…ごめんなさい。」

「俺は別に謝ってほしいと言ってないし。」

「ん…」

「じゃっ今からバイトやから。」


そう言ってテーブルに二千円札を置いて店から出て行った。

仁王のバイト前に一緒にランチしようと前に行った店に行こうと約束してた。朝、あたしが用事があったから店の前で待ち合わせとなった。

少し早く着いたので店の中に入って待ってたらちょるちゃんからLINEでこんなのTwitterで回ってるよと画像が送られてきた。開いてみると今朝の用事をしているあたしだった。用事とはパパのファンだと公言している売れっ子俳優の佐山ハヤトに旅行のお土産を渡すということだった。お互い時間が合わなくてお土産の消費期限が近かったので代わりにあたしが渡しに行くことになっていた。家にも何回か来たことがあったので面識はある。

渡すだけじゃあれだしお茶しようと言われてカフェに入ってご馳走してもらった。そのときに知らない人に盗撮されTwitterにあげられたみたいだ。あたしの顔は写ってなかったんだけど分かる人にはあたしだと分かる写メだった。

あたしはお兄ちゃんがいたらこんな感じかなって思ってるし向こうもこんな妹いたらいいのにと言われた。しかし仁王は前からよく思ってなかったみたい。一回仁王がうちにいる時に来たんだけどその時2人に何かがあったみたい。知らないけどね。

いつの間にか仁王にもその画像が知られていて何で2人で会ってんのと言われてお土産を渡すうんぬん話したけどお茶することはないと言われた。そこであたしは向こうは彼女いるから大丈夫だよと言って仁王はさらに不機嫌。そっから無言で昼ごはん食べて、食べているうちに謝っといた方がいいかなと思い謝ったんだけどあいつの機嫌は直らず。

これからどうしようか思ってたらさっこから電話。


「もしもし?」

「Twitter見たよ、仁王怒ってない?」

「怒ってないって言ってるけど怒ってる。今暇?」

「暇!ってかさっき仁王のバイト先の前通ったら仁王会ったの。」

「あっそーなの?あたし今ね、仁王のバイト先の近くの定食屋さんにいるから来てよ。」

「おっけー行くね。」


しばらくするとさっこが来てくれた。そして何があったか詳しく教えてあげた。


「なまえにとってはパパのかわりに用事を済ませたなんだけど、仁王にとっては自分じゃない男とお茶してたんだよ。それも気に食わない男と。2人の中で何があったかわからないけどね。」

「向こうは彼女いるのに。」

「それでも男と女。何があるか分からないよ。」

「んーどうしよ。」

「先に仁王にこの事言っとけばよかったかもね。後で言おうと決めてても先にそれ知られてしまったら仁王には黙って会ってたって勘違いされるよ。」

「謝っても許してくれないし。」

「それはなまえが何に対して謝ったか分かってないのを分かってたからじゃないの?」

「そっか。」


さっこにアドバイスをもらってるとママから留守電が入っていてまた連絡するとこのこと。あーこれは絶対朝の用事だ。店を出てさっことカラオケ行ってたくさん歌って暴れてさっこと解散。そして今、仁王のバイト先の前で仁王がバイト終わるのを待ってる。

多分あともうすぐで終わるはず。10分程待ってると仁王が出てきた。


「迎えに来た。帰ろ。」

「おん。」


歩いて2分くらい。ずーっと無言。このままじゃダメだと思い、勇気を出して聞いてみた。


「あのね、本当はなんで謝るんだろって思ってたの。」

「おん。」

「でもね、考えてね最初から仁王に話してたらよかったのかなって反省してる。」

「俺も不機嫌丸出しで悪かった。色々とストレス溜まってて今日のことあったからあんな態度とってしまった。」

「じゃあ仲直りしてくれる?」

「おん。」


歩くのをやめて仲直りの握手。珍しく仁王の手の方が暖かい。


「名字のが冷たい。」

「仁王のこと待ってたからね。一つ聞いていい?」

「ん?」

「なんでね佐山ハヤトのことになると不機嫌なるの?」

「あいつ俺が欲しかった限定モデルの靴持ってたから。嫌味なくらい自慢されたぜよ。思い出すだけでムカつく。しかも今日夢に出てきたし、名字があの靴をはいたあいつとお茶しとったし。」

「へぇーそうだったんだぁ。ふーん?」


嫉妬しててあんまり気に食わないのかと思ってたんだけど違った。でもさっきあたしと佐山ハヤトがお茶してたしって言ってたけどまさかこれは嫉妬?


「あたしと佐山ハヤトがお茶しててヤキモチ妬いたの?」

「それは思わんかった。写メ見たらあいつ限定モデル履いとったからムカついたなり。あ、まさか名字俺がヤキモチ妬いたと思ってたん?」

「あっいやそのちがっ!」

「んーそうかそうか。そうやったんか。んじゃ予定変更で少し休憩なり。」


そう言って近くにあったホテルに連行されてしまった。ああ、そういや仁王はこんなことではヤキモチ妬かないや。リリーちゃんにのようにキスとかハグとかじゃないと妬かない奴だ。幸村とお茶したりしてもガトーショコラ食べたかった、行きたかった、だったし。

ま、仲直りできたからいっか。


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bkm
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