05



「今日は上の娘の成人式で朝からバタバタでした。そして久しぶりに家族写真を撮ってもらいました。仕事で撮るのとは違い少し緊張してしまいました。上の娘から手紙を貰いました。今度ゆっくり見たいと思います。下の娘はというと僕と一緒に朝から活動していたので昼寝しています。」

「恥ずかしいから声に出して読まないでよ。」

「えー?俺、名字のお父さんのブログ好きなのに。」

「本人じゃなくてあたしが書いてるて知ってるくせに。しかもこの時昼寝してたのはパパだし。」


美化委員の掃除当番で委員長の幸村と黒板クリーナーの掃除をしている。あたしは美化委員じゃないんだけど幸村にココア一つで賠償されて手伝ってる。

隙間風が吹いていて寒い。窓の近くだしもっと寒い。冬は好きだけど寒すぎるのは嫌だよ。


「後何分で終わる?」

「30分?」

「えー寒いよ。」

「我慢しろよ。」

「そーいうときは幸村が着てるブレザー渡したり幸村が巻いてるマフラーを渡したりするんじゃないの?」

「女の方が脂肪あるんだから我慢しろよ。」

「言い方酷い!」


幸村のマフラーを取ってやろうと手を出すとぺしっと幸村に叩かれた。


「そーいうのは仁王にでもしてもらえよ。俺だって好きな女の子には優しいよ。」

「仁王ねー」


仁王と歩いてると勝手にあたしのマフラーや手袋を奪って身に付けるよね。少女漫画と現実は遠いわ。


「だめだわ。」

「あいつは思いやりと言う言葉を知らないやつだからね。ほら次行くよ。」

「へーい。」


30分後、クリーナーの掃除が終わり幸村にココアを奢ってもらった。本当に奢ってもらえるとは思ってなかったので少し戸惑ってる。しかし暖かい教室で飲めると思ってたけど幸村に引っ張られて寒い寒いテニスコートのベンチで飲んでる。

切原部長(まじうける)がジャージを肩にかけて腕を組んで指導している。たまに動きが鈍いよとかまだまだだねとか言ってる。絶頂とか言った時は頭イかれてんじゃないのとか思った。


「ねぇ赤也、その肩にジャージかけてるのって俺の真似?」

「そおっす!俺、これやってみたかったんすよ!」

「恥ずかしいからやめて。」


幸村は赤也のジャージを奪い思いっきり投げた。そのジャージはフェンスを越えて今までよりも高く美しい弧を描いた。


「あーっ!幸村部長!俺のジャージ!」


赤也は全速力でジャージを取りに走ってった。幸村は赤也のことはスルー。コートで練習してる後輩にほら赤也の事は気にせず練習してと注意していた。


「幸村先輩のああいうの見ると懐かしいですねー」

「だねー」


ボール拾いを終えた後輩マネが戻ってきた。なんか懐かしいかも。


「赤也って部長になってからいっつも幸村先輩の真似してるんですよ。あんたがやるとアホみたいだからやめてって言ってるんですけどねー」

「変わってないねーやっぱり。てか最近太った?」

「あー分かりますぅ?幸せ太りかも?」


怒るかなーって思ったらまさかのニッコリで答えてくれた。


「まさか彼氏できたの?」

「そーなんですよ!クリスマスに!」

「おめでとう!よかったねー」

「はいー今度お茶するときにたっくさん話しますね!仁王先輩とは最近どうですか?」

「えー変わりないよ。」

「大学入ってからですよね!修羅場は!」

「あたしもそれは思う!仁王ともこないだ話した!大学入ったら何か起こりそうって!」

「じゃあ大学入って1ヶ月くらいしたらお茶しましょーね!」

「その1ヶ月くらいってのが生々しいよ。」

「あ?分かりますー?ふふっ。」


こいつはあたしと仁王に一波乱起こってほしそうだ。あたしも仁王も面倒なことはいやだから起こしたくはないけど。


「あっあたし夜から用事あるから帰るね!」

「分かりましたー!また連絡しまーす。」


みんなにバイバイして帰宅。赤也はなかなか帰ってこないなーと思ってたら幸村が投げたジャージは赤也の担任のところに落ちて怒られていた。


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