【アイのムチ】  リツ×チハヤ×舞白 +デイジー R18 ※欠損あり

奴は笑った。眼鏡の奥で。
丸い瞳が弧を描いた。小振りな唇が半分開いた。

「貴方は、こうすれば救われるのでしょう? 貴方の周りは、こうすれば救われるのでしょう?」

小さな体に不釣り合いな大剣を振り翳す。

「大丈夫、神は必ずや皆を救って下さいます。貴方と、貴方を愛する人々に幸あれ」
ーージップロック。

腕が無くなった。

その結果どうなったかと言うと、元々俺の世話を焼いていた舞白は今までに輪を掛けて甲斐甲斐しくなり、加えて心配性のリツまでも俺の世話をするようになった。
24時間。365日。
俺はふたりに世話をされ、ふたりは俺の世話をする。
なんだ、これは? 奴が言った救いってやつは、こんなんなのか?
……ふたりの顔を見てみろ、と言ってやりたい。
俺を見つめる瞳。狂ってやがる。
自分が俺の全ての世話をしているということに快感を感じているようにしか見えない。狂ってる。
前の状態の方が正常だったに違いないのに。こんなのが、救いだってのか。
当然、舞白もリツも本来の仕事を全うしつつ俺の世話をしている。
舞白が仕事をしている時はリツが俺の世話を、リツが仕事をしている時は舞白が俺の世話を、という具合に。
不思議とこのバランスは崩れない。
ただ、ふたりとも仕事の質は変わっていないのに完了までの早さが段違いになった。
それは確実に、俺の世話をする為であると、簡単にわかる。
はあ、と密かに溜息を吐いた。意味がわからない。俺を狂わせないでくれ。
毎夜毎夜。ふたりが俺の元を訪れる。
家の者が全て寝静まった真夜中に。
仕事に俺の世話に、更に夜伽だと? 早く寝ろ、と言いたくなる。
どうやってその労働苦を熟しているかと言うと、やはり俺の世話をするという快感を得る為なのだろう。
言っておくがこれは俺が望んだ形じゃない。
確かに俺は、ふたりに世話を焼かれるのを気に入っていた。
もっと手間取らせてやろうという悪戯心もあったし、困ったように笑われると嬉しくさえあった。(ここで吐き気を催すが目の前にふたりがいるので堪える。)

ーーだがなあ、やはりこれは違う。
俺は自分の下半身を見下ろした。舞白とリツ。
俺が言うのもアレだが、お前らはそんなんでいいのか……?
俺の股間にむしゃぶりついて、日々の労働の疲れが癒されるとは思えないのだが。
手を伸ばして、舞白の髪を撫でようと  ーー嗚呼、腕が無いんだったな。
俺はただ布団に下半身を投げ出して、クッションに上半身を支えられて、喘ぎながら噎せ返りながら只管に俺の世話をするふたりを見つめる。
舞白が俺のモノを咥えれば、リツは内腿に吸い付く。
舞白の舌が俺の腹まで登って来れば、今度はリツがモノを舐め回す。
ふたり分の唾液で俺の腹から下が粘っこく濡れる。
「はあ、あ、ん、」だとか、「んぅ、ふ、ふぅ、」だとか、
兎に角喘ぎ声は聴こえるが、どちらも喋りはしない。
舞白もリツも。よく喘ぐ癖に。
ただ、ちらちらと俺の目を見てくる。
今、ばちりと視線があった。
舞白の方だ。
俺の目を抉るほど見つめながら、上体を起こし、腰を浮かし、いきり勃つ俺のそれを自分の穴にひたりと当てた。
はくはくと唇が動いた。何か言いたいのか。
俺は見つめるしか出来ない。
舞白の細い腰を鷲掴んで突っ込んでやることも、揺すぶっていい所を突いてやることも、真っ赤なをなぞってやることも。
ただ脳内で妄想して垂れ流すだけだ。
そっと、徐に、舞白が俺を包み込んでいく。
熱い。

リツは、と舞白の白く赤い肌の向こうを見遣る。
リツは暫く俺の内腿に齧り付いていたが、舞白が奥に届くまで入れ込んだのを見ると、不意に俺の右脚を持ち上げた。

「っ!?」

体がびくりと跳ねた。
その振動に、舞白が「あっ」と叫んだ。

「リツ……っ、や」

リツは俺を見て微笑みながら、指を入れてきやがった。
自分で揺れだした舞白の向こうに、俺の穴を弄るリツの姿が見え隠れする。
喘ぐのを止められない。
舞白が、じゃない。俺が。口を塞ぐ手が無い。
生理的に滲む視界で、舞白とリツを捉える。
舞白は控えめに、だがしっかりと喘ぎながら自分の内膜に俺を擦り付けるし、リツは伝う汗を舐めとりながら俺の内膜を擦りまくる。
俺はもう、何が何だかわからなくなって、というよりわかりたくなくなって、ただ、先の無い腕を見た。
畜生、この腕があれば。

「はあっ、りつ、あっ、う、……あ゛っ!」

リツが指を抜いて、違うモノを入れてきた。リツの唾液でぐちゃぐちゃになった中を、もっと太い、硬いモノで掻き回される。

「やだッ、リツッ、やだあ……ッッ!」

赤子かよ。自分で自分の言葉にツッコミを入れる。
舞白に乗られ、リツに嵌められ、身動きが取れない。
首を捻って、息をするしか出来ない。
だが息をすれば声も出る。
全く、俺から出ているとは思えないような気持ち悪い声が。耳を塞ぐ手も無い。

「リツ、リツっ……いた、い、いだい゛っ……やだ、やめ、っ」

痛い痛いとは言うものの、本当に痛いのかは分からない。
何も考えられない。ただ熱くて熱くて、何処もかしこも、熱くて、焼ききれそうだ。
いきなり顎を掴まれて、横を向いていた顔を引っ張られ「んむっ」口付けられた。
誰かと思えば、まあ位置的に考えれば当然なのだが、舞白だった。
完全に俺の腹に伏せて、目を瞑り、眉を寄せ、垂れる唾液を気にも留めず、俺の口腔内を弄り回す。
硬くした舌先で、右側の奥歯から歯茎をなぞり、左側の内壁を少しつついて、舌を捕まえ、ぬるる、と舐め合わせた。ところで離れた。

「はあっ……まひろ……」

唾液が溜まった口を開いたまま名前を呼ぶ。
薄眼を開けた舞白は至近距離で俺を見つめる。
何か懇願するように。どうしたんだ? こんな時にお前の目尻に触れる指が無い。
舞白の意思を測りかねている間に下半身に意識がいった。
気付けばリツは汗だくで俺の中に出入りしていた。
結合部が擦れまくって、多分、リツが出したモノでぐちょっぐちょっと気持ち悪い音を出している。
舞白が強請るように俺の顎を舐める。
リツが苦しそうに微笑みながら腰を前後する。
寝ているしか無い俺は、無い腕の代わりに脳味噌を動かした。

くそっ、なんかわかってきたぞーー眼鏡のチビめーー腕を、手を、指を、奪った理由が。自ら腰を振る舞白を思い切り揺さぶりたい。
赤く腫れた乳首を揉みしだきたいし、俺のを咥え込んでる穴に同時に指を突っ込みたいし、耳朶を弄んでもっと喘がせたい。
俺の右脚を持ち上げるリツの手首を捻り上げたい。
笑う口元を殴りたいし、俺が突っ込まれるのではなく俺が突っ込みたい、勿論慣らしたりなぞしない。
俺は俺を求めてくる相手の好きにはさせたくない。
俺がこいつらを求めるのとこいつらに求められるがままになるのとは違う。
愛されるのと同じくらい愛するなんて無理だ。
だからこっちから一方的に愛してしまいたい。
だけどそれは苦しい。
愛されるのと同じくらい愛するのは無理だがーーせめて。
すれ違いだの不均衡だのどうでもいいから。

俺からも、愛させてくれ。俺からも、触れさせてくれ。

「っ!!ぅ、え゛ッ、ほ、あ゛っ……ふ、げほ、ぇ゛ほっ……!!」

吐いた。普段絶対に考え無いようなことを考えたからだ。くそ。布団がゲロまみれだ。

「っあ、あ、あっ!」「んっ、くっ……!」

何でこいつら今イッてんだ。

舞白が強く締め付けたおかげで俺もイッた。意味わからん。
はあ、畜生………………………………………………………………




目を開くと眩しかった。
はあ、生きてるのか。
思わず目を塞ぐ。目蓋に当たる手の甲が汗ばんでいる。

「………………」
ん?んん!?はあ!?…………腕あるし!!

「あ、お目覚めですかー、よかったですー!このままお目覚めでなかったらデイジーどうしようかと!」

声のする方に首を曲げて見る。
どうやら俺は、コンクリの床に仰向けで寝ているようだ。
「クッソ眼鏡チビ……!」
「そんなに怖い顔をしてはいけませんです!」

何あたふたしてやがる。あたふたしたいのは俺だドクソ眼鏡チビ。

「なんなんだ……?腕あるじゃねえか……なんなんだ? 今までのは……腕がなかったのは……」

「それはですね!」

眼鏡の丸いレンズをくいっと押し上げる仕草がかなり腹立つ。

「この剣のちからなのです!というかただの催眠術なのです!」

じゃーん、と剣を振りかざすのはやめろ。そいつを俺の目前で振り上げるな。

「なんっだよ……畜生……」

ぎりぎりと歯噛みした。
このまま上からコンクリを流して埋めてくれ。早く。
天井やら棚やらから垂れ下がっているなんかよくわからん趣味の物を落下させて潰してくれてもいい。

「でも」

ああ、いい笑顔してやがるなあ、むかつくなあ。

「これで、救われたのではないですか?」

俺は何も言わず舌打ちした。

ただ寝違えた首が痛くて敵わん。それだけだ。



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