雪灯り 壱

雪の様な人でした。熱を持って接すれば解けてその形を失くしてしまう。溶けた貴方を救っても、少しずつ指の間から流れていってしまうでしょう。それでも私は貴方の側に居たいと、そう思わずにはいられなかったのです。

パタン、書き終えた日記を閉じる。窓の外を見ると真っ白な雪がはらはらと舞っていた。

【雪灯り】

週に一度ヤマトは報告書を持って舞白の自室を訪れる。椿の様子に変わった所は無かったか、何か気が付いた所を纏めて報告してほしいと言う舞白からの要望だった。家族想いな方だ、そうヤマトは思っていた。多忙で屋敷を空ける事も多いが全てに目が行き届く様に考えている。
「舞白様がいらっしゃるからこのお屋敷は成り立っているんでしょうね。」
そんな言葉をかけた事があった。
「そうで、しょうか?」
舞白はどこか困った様な笑みを浮かべてすぐに書類に目を戻した。謙虚な方だ。そう思ったが一瞬見えた傷ついた様な顔をヤマトは見逃さなかった。

「失礼します。」
今週の報告書を持って部屋に入ると舞白はお疲れ様。と、いつも通り穏やかな笑みを浮かべ椅子に座っていた。
舞白が書類に目を通す間気になった点などにすぐに答えられる様にヤマトは室内で待機している。今回も、ちょっといいですか?との声に席を立ちここですがと舞白の指差す箇所に目を向けた。しかしそれよりも先に目に付いたのは着物の袖から覗く白い腕に痛々しく残る赤紫色をした痣だった。よく見ると上手く着物で隠してあるが腕の他にもあらゆる箇所に痣や傷が見えた。
「舞白様、失礼ですがそのお怪我は一体…」
「ああ、なんでもありません。大丈夫ですよ。話を戻しましょうか。」
ヤマトが言い終わる前にその疑問は舞白によって流されてしまった。
悶々としたまますっかり寒くなった夜の道を早足で歩く。舞白が見せた笑顔にヤマトは見覚えがあった。数えきれない程見たあの笑顔。見た?違う、それは、俺が見せた、そこまで考えた所で激しい頭痛がした。その瞬間思わずしゃがみこんでしまったヤマトの頭に一つの可能性が生まれた。しかしこれはあの屋敷に、彼には不似合いすぎる。そう思えば思う程彼の笑顔がよみがえる。
「舞白様…貴方は、」

何を隠しているのですか?





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