*頭鳴り
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*地鳴りと同じ設定。どちらかといえば舞白くん視点。





 頬にあたるのは柔らかいラグマット。舞白は眠い目を擦り、その後でゆっくりと目を開ける。視界に入るのは今日も変わらない和室。ここが舞白の世界のほとんどを占める。
 俯せの状態で肘をついて、少しだけ上体を持ち上げる。そうして周りを見渡すが人影はない。窓の外は明るいから、きっと今は昼間なのだろう。そんなことを考えているうちに腕が疲れてきたので、ころんと横に転がる。着物の袖を踏まないように気をつけながら仰向けになる。疲れた腕を労るようにぐっと上へ伸ばせば、手が何かに触れる。それを引き寄せてみれば、一冊の本だった。
 一応、中学レベルまでの学校で取得するであろう知識やそれ以外の社会的な知識は父の教育によって身についている。ここで暮らすようになった後も気まぐれに本を読んでいるから知識は増えている。しかし、舞白としては正直、それに昔ほど意味を感じていない。知識を持っても、この部屋では必要がなく、また舞白はこの部屋から1人で出ることがない。それならば、持っていても持っていなくても変わらない。むしろ、『要らない』ものかもしれない。
 もちろんその気になれば這ってでもこの部屋から出ることは可能であるし、車いすなどがあれば外で生活していくことも可能なのだろう。しかし、そんな舞白に価値はないのかもしれない。父が舞白をこの部屋へ移した理由は、それこそ『要らない』からだ。それならば、わざわざ道具を使って苦労してまで外へ出る必要もない。
 そんなわけで今は興味を持てなかった本を少し遠目の場所へ追いやる。代わりに手に取ったのは羊のぬいぐるみ。ふかふかのそれを抱きしめて横向きで目を閉じる。まだきっと千羽陽は帰ってこないだろうからもう少し寝てしまおう。そうすればこの頭の中で鳴り響いてる深いな音も消えるだろうから。

 微睡みから覚めれば、もうすっかり日が落ちた後で、仕事から帰ってきた千羽陽と食事をして風呂に入れてもらう。
 湯冷めしないようにと、暖められた部屋には大きな布団が1つ。千羽陽は舞白をその上に丁寧に座らせる。
「ありがとうございます」
礼を言って微笑めば唇を奪われた。舞白の正面に膝をついた千羽陽が器用に舞白の寝間着である浴衣の裾を踏んでいるので後ろへ体を退くことすらできない。さらに後頭部へ千羽陽の手が添えられて、あとはされるがままだ。
 しばらくして長い口づけが終わった頃には舞白の息はすっかりあがってしまっていた。とろんとした目で千羽陽を見上げる。そんな舞白を抱き寄せて、千羽陽は舞白の首筋から背筋にかけてを指でなぞる。くすぐったそうに身を捩る舞白の頭を左手で引き寄せ露出した首筋を甘噛みする。ついでとばかりに吸い付けばくっきりと朱が残る。
「兄さん。くすぐったい、です」
首を横に振ってそう言う舞白の声は笑っているようだった。
「そうか」
嫌がっていないようなので続けることにして、舞白の体を少し持ち上げて胡座をかいた膝の上に向かい合うような体勢で座らせる。足は千羽陽にとって背中側の方へ伸ばすようにしておく。そして、丁度目の前にきた鎖骨にもいくつか朱を散らす。
「くすぐったいだけか?」
風呂上がりということだけではなさそうな体の熱に気づいてそう聞けば、
「気持ち、いい、っです」
と吐息混じりの声がする。それならばと、胸の飾りを甘噛みしながら舞白の下半身へと手を伸ばす。足の位置をずらして空間を確保し、舞白の後ろへと指を這わす。入り口をなぞるように指を動かせば、一際大きく体が揺れる。用意しておいた小瓶からローションを手に取って、しっかりと温めてから後ろを解していく。まずは指1本でゆっくりと。慣れてきたら指を増やしていく。時折、首筋や胸の飾りなんかにも気配りをしながら、焦ることなくじっくりと。
 ゆっくりと時間をかけて千羽陽の指をしっかりと受け入れるようになったら、お次が本番だ。華奢な体を壊してしまわないようにゆっくりと持ち上げて、それを舞白の後ろに合わせる。これから起こることをきちんと理解している舞白が少しずつ息を吐くタイミングに合わせて、舞白の体を下ろしていく。手を離してしまうと自重で沈んでしまうので支えたままだ。
「んっ、・・・ぁ、にい、さっ」
舞白が千羽陽を呼ぶ。千羽陽が舞白を見れば、そのタイミングで舞白が千羽陽にキスをした。触れるだけのキスだったが、真っ赤になった顔から察するに舞白の精一杯なのだろう。
 千羽陽のそれを根本まで飲み込んで、舞白は嬉しそうに笑う。その笑顔が眩しくて千羽陽は目を細めた。

 千羽陽は新しいシーツの上に寝かせた舞白の体を清めていく。暖かいタオルで体を拭くと、白い肌に散らされた朱が目に止まる。今日はいつもより多いかもしれない。
 吐き出した白濁をかきだすために舞白の足を持ち上げる。ふるりと震えた体に笑みを浮かべて、太腿の内側にもいくつか朱を浮かべる。いつ見ても綺麗な足に傷はない。それでもこの足は動かない。そんなことを考えながら、後始末を済ませて、舞白に新しい浴衣を着せて布団をかけてやる。
 使ったタオルや桶は襖の外へ出して、舞白の横へ潜り込む。暖かい体温が伝わってくる。
「兄さん」
ふいに舞白が千羽陽を呼ぶ。顔を上げて、舞白を見ることで返事に変えれば、舞白が言う。
「とても暖かいですね」
「そうだな」
そう答えて、千羽陽は舞白を抱きしめる。この体温は確かにここにある。それならば今はそれだけでいいか。そう思った。


   

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