*地鳴き
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※陰間パロと比較して足が不自由な舞白くんという設定に惹かれた結果。





 大きな屋敷の離宮には限られた人間しか入れない部屋がある。そもそも離宮でさえ入れる人間は両手で足りるほどの当主から許可を受けた者のみ。さらにその部屋へ入ることを許されているのは2、3人しかいない。
 そんな部屋へ仕事から戻った千羽陽はまっすぐに入っていく。襖を開けて中へ入れば、畳で肌が擦れることがないようにと敷かれた洋風のラグマットの上に丸くなって眠る人影がある。派手すぎず鮮やかな色の着物は遠目にもその仕立ての良さが分かる。その傍へ膝をついて声をかける。
「舞白。・・・舞白」
軽く肩を揺すれば緩やかに目が開く。
「あ、兄さん。おかえりなさい」
手の甲で目を擦りながら、ころんと仰向けになった舞白が千羽陽を見上げる。にこりと笑う笑顔は無邪気さに満ちている。
「あぁ。寝ていたのか」
「部屋の中が暖かかくて、うとうとしていたみたいです」
ふわぁっと欠伸をしてから舞白は肘をつき、手をつき、上体を起こす。まだ眠気が残っているのかふらつく背中を支えて、足の位置を直してやる。両足をそれぞれ外側に崩した形で座り、舞白がにこりと笑う。
「ありがとうございます」

 舞白が足を悪くしたのはもう随分と前の事だ。父からの指示で罰として倉の片付けをしていた時に梯子から落ち、骨折した足は骨が完治しても動くことはなかった。検査をしても何の異常もなく医師によれば精神的なものではないかとのことだったが、カウンセラーを名乗る人間が何人やってきても舞白の足が動くことはなかった。
 そのことに激怒した父は舞白をこの部屋へ閉じ込めた。自分では移動することも叶わない舞白は事情を知る古くからの使用人に世話をされながら今もここで暮らしている。
 そんな父がこの世を去ったのが数年前。元々、後継者として指名されていたはずの舞白は存在自体を忘れ去られることとなり、結果として今は千羽陽が店を継いでいる。千羽陽と舞白には年の離れた弟・・・椿がいるのだが、おそらく舞白のことを朧気にしか覚えていないだろう。もしかしたら、自分に兄が2人いるという認識さえもないかもしれない。

 この部屋で暮らすようになってからというもの舞白は幼くなった。足を怪我する前は父から後継者としての教育を受けていたこともあり背伸びをして大人に混ざっていた。しかし、怪我の後、父に後継者から外され、最初のうちは悲しみにくれていた舞白はやがて状況を理解するにつれて年相応の幼さを取り戻し、以降成長をしていない。それに連動するかの様に体の成長も緩やかになっているようで、成人して数年経つはずの舞白は今も十代半ばの外見をしている。

 千羽陽は部屋へ運ばせた夕食を舞白と共にする。足が不自由であるとはいえ、上半身の動きに問題はなく、舞白は綺麗に食事をする。その動作には無駄がなく、行儀もいい。こういう所に父の教育は色濃く残る。
「舞白」
「はい」
「美味いか」
「美味しいですね」
もぐもぐと食べている舞白を見ながら、千羽陽は酒を呷る。
「兄さんも食べますか?」
首を傾げた舞白が煮物の肉を箸で摘んで千羽陽の口元へ運ぶ。千羽陽が無言で口を開ければ、嬉しそうにそっと口の中へ肉が入れられる。ゆっくりと咀嚼すればよく味が染みていて美味い。
「美味しいですか?」
「美味いな」
そんな会話をしながら食事をするのが千羽陽の日頃の癒しだ。

 食事が終われば次は風呂だ。基本的に千羽陽が毎日、舞白を風呂に入れている。仕事でどうしても時間が遅くなる場合には使用人に任せるが、その際は清拭のみにさせている。
「風呂へ行くぞ」
そう声をかけて、千羽陽は舞白を横抱きにする。基本的に移動する時はこの体勢なので、舞白も千羽陽に負担をかけないように自然とその首へ腕を回す。廊下を歩いて風呂場へ向かう。必要な時以外は人払いをしているせいか人の気配はない。しかし、風呂場の扉を開ければ中は暖かく、しっかりと湯も張られている。
 千羽陽は脱衣場の一角、タオル地のマットが敷かれている場所へ舞白をそっと下ろす。そして、何の躊躇いもなくその服を脱がせる。足を横へ開いて座っても足が見えないように工夫されている舞白の服は、和服と巻きスカートを組み合わせたような構造をしている。その為、帯を解くと簡単に脱がせることができる。それが済んだら自分も服を脱ぐ。必要なものは中に用意されているだろうから、特に何も持たず、しっかりと舞白を抱いて風呂場へ入る。脱いだ服は風呂に入っている間に新しいものへ取り替えられることだろう。
 風呂場に用意されている椅子へ舞白を座らせてやる。そうすれば、自分で洗えるところを洗い始めるので危険がないか横目で気にしながら自分も頭と体を洗う。とはいえ、舞白の場合は髪が長く洗うのにも時間がかかるので、だいたい、千羽陽が頭と体を洗い終わる頃に、舞白は体を洗い始める。千羽陽は上半身から洗い始める舞白の姿を眺める。首もと、腕、脇、胸元から腹部を洗い、背中も洗う。膝まで洗い終えた舞白はスポンジを千羽陽に差し出す。
「お願いします」
「あぁ」
足の先まで洗おうとすると上半身を折り曲げることになり危険なので、膝から先を洗うのは千羽陽の仕事なのだ。まぁ、それだけで済むはずもないのだが。
 足を軽く持ち上げてスポンジを膝からつま先にかけて滑らす。足の指の間を丁寧になぞって、反対の足はつま先から膝へ。ちらりと見上げれば、頬を赤く染めた舞白の顔が見える。果たしてそれは風呂場の熱気のせいか、それとも。
 太ももの裏にスポンジを滑らせて、行き着く先は足の付け根。すでに快感を拾ったようで緩く存在を主張し始めている舞白自身に軽く手を添え、スポンジを当てる。
「あっ、・・・にい、さん」
一気に艶を帯びた声が千羽陽を誘う。舞白は椅子から滑らないように手すりを掴んでいるせいで、声はあげるものの、千羽陽の行動を制止するには至らない。
「何だ?」
白々しく聞きながら、スポンジで裏筋を撫でて、添えた手も動かしてやる。それを繰り返してやれば、鼻にかかるような甘い声と共に白濁が吐き出された。
 力の抜けてしまった舞白の体を支えながら、温めのシャワーで流してやる。そうして落ち着くのを待って、舞白と共に湯船へ入る。

 今日は早めに上がった方が良さそうだ。


 

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