*甘い海に溺れる
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*全力でつっくんのターンなつくしろ





 「それならば、兄さんの1日を私に頂くことはできませんか?」
誕生日プレゼントは何がいいだろうかと聞くと、九十九は少し考えてそう答えた。
「え?1日?」
予想外の答えに思わず聞き返せば、困ったような笑みを浮かべて九十九が頷く。
「今日もこうして一緒に食事をしていただいているのに、我が儘が過ぎたでしょうか」
「ううん。・・・むしろ、それで良いの?」
自分なんかの1日にそんなに価値があるとも思えないのだが。まぁ、一応は社会人であると考えれば、そこそこに貴重なものになるのだろうか。
「はい。それが良いんです」
「うん。・・・分かった。それじゃあ、後で日程を決めようか」
その時はそんな感じで話が終わり、他愛のない話をしながら食事を続けたわけなのだが。舞白は、その時に何も考えずに了承してしまった自分を少しだけ悔いていた。あの時、もう少しきちんと考えていれば、こんなに恥ずかしいことにはならなかったのかもしれない・・・と。

 霧崎家の地下にはいくつもの部屋がある。それは九十九たちが仕事で使用するものもあれば、客間として大事な交渉の際に使われるものもある。その中の一室に舞白はいた。床は風呂場などに使われる水はけの良い材質で、壁は暖かみのあるベージュ。それなりの広さの部屋には、いくつかの棚があり、端の方に硝子張りのバスルームがある。
そんな部屋の中心に置かれた椅子が1つ。天鵞絨張りのパーソナルチェアーはおそらくオーダーメイドなのだろう。そこに座る舞白は九十九が用意した・・・というよりおそらく九十九のものであろうYシャツだけを着ている。見えてしまいそうというか、足で隠さないと見えてしまう状況なので、自然と横座りになるが、大きな椅子は舞白の体をすっぽりと覆い隠してしまうほどなのでその体勢でいても窮屈さは感じない。
 シャラリと音を立てるのは両足についた細身の輪とそこから伸びる同じく細い鎖だ。それらは細いながらも相当な強度をしていて、舞白の両足首を一纏めにした上で椅子の脚へ縫い止めている。そして、同じ物が手首にも伸びていて、こちらは鎖の先が左側の肘掛けへと固定されている。
 そんな状況の舞白に対し、九十九はというと舞白に食事をとらせていた。椅子の横へ置かれた同じく高級そうなテーブルの上に並ぶのはどれも舞白の好物だ。九十九は舞白のすぐ横へ立ち、小さく切り分けた料理をスプーンで舞白の口へと運ぶ。
「美味しいですか?兄さん」
「美味しいよ。・・・でもさ、九十九」
「今日は1日付き合ってくださるのでしょう?あぁ、もちろん嫌なことがあったら断ってくださって良いですから」
「・・・うん」
恥ずかしさはもちろんあるが、これが九十九が本当にやりたかったことであるなら、それは受け入れてやりたい。そんな兄としての心が舞白を此処へ引き留める。九十九が舞白のことを慕ってくれていることは知っているし、その思いが少々歪んでしまっている点に関しては環境のせいもあるのだろう。
 あーんと口の前に差し出された料理を口を開けて受け入れ、咀嚼して飲み込む。自分の手で食べるわけではなく、誰かに食べさせてもらうというのは結構恥ずかしい。
「美味しいですか?」
「うん。・・・あ」
返事をするのと同時に口の端からソースが零れる。九十九は舞白の声でそれに気づくと、にこりと笑って
「あぁ、零れてしまいましたね」
とソースを指で掬い、ぺろりと舐める。
「・・・ごめん」
「いいえ。何も気にすることはありません。兄さんはただ、身を任せてくださればいいのです」
九十九の指先が俯く舞白の顎を掬い上げ、視線が交わる。舞白は羞恥に朱の差す顔で、精一杯いつも通りの苦笑いを浮かべた。

 九十九の手が舞白の両足をそっと持ち上げる。舞白は不安そうな顔で九十九を見るものの拒否することはなく、足を任せる。そのことに口角を上げた九十九は引き寄せておいたオットマンに座り、自らの膝に舞白の足を恭しく乗せる。
 そして、食器を片付けたテーブルの上に置かれたのは小さな瓶。九十九はその中身を指で掬って舞白の足に滑らせる。
「・・・それ、何?」
「これですか?マッサージオイルです。知り合いの方からいただいたのですが、リラックス効果のあるアロマを使っているそうで、兄さんにぴったりだなと思いまして」
オイルをつけた指が足を滑っていく。足の裏を撫で、指の1本1本を解して、上へと流していく。脹ら脛のコリを解して、膝の形をなぞって、太ももへと指が滑っていく。
「このオイルは発汗を促す作用があると聞いたんですが、温かい感じはしますか?」
「うん。なんか、足が温かい感じがする、かな・・・?」
どちらかといえば、末端冷え性である舞白の足は普段から体温が低い。その足がぽかぽかと温かくなってきて、舞白はその気持ちよさに顔を緩ませる。気持ち良さそうに目を細めた舞白を見て九十九も嬉しそうに微笑む。
「それは良かったです」
太ももの筋肉を解した指はそのまま足の付け根の傍へ行くと、膝の方へ下がっていき、また足の付け根へ戻るという動きを繰り返す。発汗作用に伴う上気した体で、舞白は段々とむず痒い感覚を覚え始める。普段から千羽陽によって快感に慣らされている体にそれは十分な刺激になる。愛する弟の前なのだからと堪えても、つい声が漏れる。
「んっ、ぁ・・・」
艶っぽい声はしっかりと九十九の耳にも届いたらしく、九十九が舞白を見る。ただのマッサージなのに、はしたないと恥ずかしさでいっぱいの舞白が顔を伏せる。
「大丈夫ですか?」
「・・・ぁ、うん。ごめん。変な声出して」
「いいえ。兄さんが気持ち良いと感じてくださるならそれが一番です。それでは」
すーっと九十九の指が舞白の太ももをなぞる。もしかして、と相手が九十九であることを忘れて僅かな期待を抱く舞白であったが、
「反対の足もマッサージしましょう」
にこりと微笑む九十九がその期待に応えることはなかった。

 じっくりと時間をかけて、もう片方の足のマッサージが終わった頃には、舞白の体は火照り、しっかりと存在を主張する自身を唯一の衣類であるYシャツの裾を引っ張って隠しているような状況だった。
「どうでしたか?」
「・・・ぁ、えっと、とても、きもちよかったよ」
吐息に籠もる熱を感じながらも努めていつも通りに答える。
「・・・兄さん。嫌なことがあったら言ってください」
そう言って、オットマンから立ち上がった九十九が舞白の足の間に跪く。舞白自身から絶えず溢れ出す先走りを指に纏わせて、舞白自身やその付近を丁寧に愛撫する。徐々にその範囲を広げていき、九十九の指が舞白の後ろへと伸びたのはかなり時間が経ってからだ。普段、千羽陽との性急な行為に慣れてしまっている舞白には、1つ1つの動きが焦らしのように感じられて、煽られる。
「つ、くも。・・・もぅ、大丈夫、だから」
途切れ途切れになりながら言うが、九十九は首を横に振るばかりだ。
「しっかり慣らしておかないと辛いのは兄さんですからね。万全を期さなければなりません」
「でも、その、・・・もぅ」
舞白が生理的な涙をたたえた瞳で九十九を見る。息が荒く、快楽を求める姿は、普段の兄としての姿とは違い、ひどく庇護欲をそそられる。しかし、ここでがっついてしまっては意味がないのだ。悔しいことに舞白の体はその大半が千羽陽によって染められてしまっている。そんな舞白がくれた機会を逃すわけにはいかない。だからこそ、ゆっくりじっくり時間をかけて、どこまでも舞白の身体面を配慮しながら進めていくのだ。九十九は舞白を汚したいわけではないのだから。

 九十九がようやく自身を舞白の中に埋めた頃には、舞白の瞳はどこかぼんやりとしていて、与えられる快感の1つも漏らさないといったくらいに敏感になっていた。奥へ届く感覚に体が撓る。
 足の鎖はすでに外されていて、両手の鎖も手首同士を繋ぐ鎖はそのままだが、肘掛けへと伸びていた鎖は外されている。舞白が着ていたYシャツはすっかりはだけてしまい、朱の差した体がよく見える。
 九十九は舞白の体を引き寄せて、背中に手を回してしっかりと抱きしめる。それにより、しっかりと九十九の形を感じ取ってしまったらしく、舞白の背中が震え、白濁が吐き出される。その締め付けで九十九も達して、小さく息を吐く。
 体を離して舞白の顔を見ると完全に焦点が合っていない。これ以上は舞白の負担になってしまうだろう。そう考えて、九十九は自身をゆっくりと引き抜き、舞白の体を大事そうに抱えてバスルームへと向かった。


 

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