*酒は飲んでも
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*酔っ払って甘える舞白くんを見てみたかったちはしろ





 夜も更け、日付が変わった頃。千羽陽と舞白は離宮の縁側で晩酌をしていた。普段ならば、千羽陽が酒を飲んでいても舞白はお酌をするだけ・・・ということが多い。しかし、今日は千羽陽の気まぐれで舞白も酒を勧められるままに飲んでいた。別に舞白は酒に弱いというわけではないのだが、特に飲みたいという欲もないらしく、付き合い程度にしか飲まない。そんな舞白の酔った所が見られれば面白いと千羽陽は思ったらしい。
「舞白。遠慮せずにもっと飲め」
「兄さん。あまり深酒をすると明日に響きますよ。もう、今日と言っても良い時間ですし」
「舞白」
「・・・分かりました」
しぶしぶと舞白が差し出した猪口に酒が注がれる。本当のことを言えば、舞白としては酒の種類ならどちらかというと甘い方が好みなのだが。そのようなことを言っていられる場合でもないので黙っておく。

 いつも酒瓶片手に過ごしている千羽陽が酔うということはほぼない。時たま、飲みすぎなのか別の理由なのか気持ち悪そうにしていたりすることもあるが、その程度だ。一方で舞白はといえば、仕事の都合上、付き合いもあるのでそれなりの強さではあるが、当然と言うべきか千羽陽ほどではない。なので、時間が経てば経つほど、舞白にも酔いが回ってくるわけで。
「・・・兄さん。この辺りでやめておきます」
口元を手で覆って小さく欠伸をしながら舞白が言う。
「もう、か」
「もうって言っても結構な時間飲んでましたよ?そろそろ夜が明けそうです」
「今日は休みだろう?」
「そうですけど・・・」
「それならもう少し付き合え。俺はまだ飲み足らない」
言葉を濁す舞白に千羽陽は酒瓶を差し出して、猪口を出すように催促する。
「分かりました。お酌はしますから、・・・ね?」
困ったように言う舞白だが、千羽陽は不満そうなのを隠しもしない。
「・・・あと一杯だけですよ」
結局は舞白が根負けし、猪口に酒が注がれる。少しずつその酒を飲む舞白の目は、とろんとしていて睡魔に襲われているのがよくわかる。くいっと最後に少しだけ残っていた酒を呷り、猪口をお盆に置いた舞白が大きく欠伸をする。口元に手はあてているものの、瞬きの多くなった目は今にも閉じられそうだ。
「舞白。眠いのか?」
「すみま、せん。・・・だいぶ、ねむくて・・・」
途切れ途切れの返事がその眠さを正確に伝えてくる。そんな舞白の様子に千羽陽は小さく笑って、酒を呷ると、そのまま舞白の顎に手をかけて引き寄せる。その流れのまま唇を奪って、含んでいた酒を口移しで流し込んでやる。ぱちくりと大きく瞬きした目が千羽陽を捉えて、しかし、押し返そうとした手にはもはや力が入っていない。そうして、くらりと視界が揺れて、スイッチが切り替わる。
 くたりと千羽陽に寄りかかった舞白の体が、ずるずると滑り落ちていき、ちょうど膝枕のような体勢に落ち着く。一度、しっかりと閉じられた目が再度開かれて濃紺の瞳が千羽陽を捉える。
「・・・もう、本当にやだって言ってるのに。飲ませないでって言ったのに」
頬を膨らまして子どものような口調で言う舞白を見て、千羽陽は満面の笑みを浮かべる。待っていたのはこれなのだ。舞白は笑い上戸や泣き上戸にはならないが、ある一定の所まで飲むとぱたりと寝てしまう。そこへ行かないようにと加減をしている舞白のラインをギリギリで崩してやると、駄々っ子のようになることがあるのだ。ちなみに、ラインを大きく越してしまうとそのまま熟睡してしばらくはぐっすりと眠ってしまって目を覚まさない。
「悪かったな。・・・その詫びにいくらでも我儘を聞いてやるぞ?」
「なでて。ぎゅってして」
そう言って舞白が千羽陽に向けて手を伸ばす。その手を自分の首に回させて、よいしょっと言いながら舞白の体を抱き起して抱きしめる。そして、背中を軽く叩いてやれば、
「そこじゃなくって、頭」
不満そうな声がした。くすくすと笑いながら、今度はきちんと頭を撫でてやれば、舞白が千羽陽の首筋に擦り寄ってくる。
「気持ちいいか?」
「うん」
ぐりぐりと頭を千羽陽の肩に押し付けはじめた舞白の体を持ち上げて、自分と向かい合うような体勢で膝の上に座らせる。そして、熱を持った体に指を這わせる。頭を撫でていた手をそのまま下ろしていく。丸い形をした後頭部から項をなぞり、背筋をたどる。腰まできたら抱き寄せて、今度はもう片方の手を浴衣の袷から侵入させる。
 胸の突起を弄って、腹へ降りてきて、僅かに存在の主張を始めた舞白自身も焦らさずに触ってやれば、もっともっととねだられた。普段の舞白のように必死にいい子でいようと、声すらも押し殺す姿も十分に魅力的ではあるのだが、こうして、素直に声を上げ、ねだる姿もまた可愛らしい。
「・・・あんまり、焦らしちゃやだ」
身体に触れていると、焦れったくなったらしく舞白が口を尖らす。
「それじゃあどうすればいい?」
「兄さんのが欲しいなぁ」
「何をだ?」
「いじわる」
追求すれば拗ねたように頬を膨らませる。
「別にいじわるはしていない。言ってくれなければ分からないというだけだ」
舞白はきちんと言えるいい子だろうと付け足してやれば、舞白が数秒考えた後で、千羽陽自身に浴衣の上から触れ、
「これ、ちょうだい?」
と言いながら首を傾げた。
「よくできたな」
そう言ってほめてやりながら、舞白の後ろへ手を伸ばす。すでに随分と乱れてしまって太ももが露わになっている状態なので浴衣の裾から手を入れることは容易い。目的の所へ手を伸ばし、潤滑剤を纏わせた指を侵入させる。
「んっ」
鼻にかかる甘い声が舞白から漏れ、それを合図にしたかのように千羽陽の指の動きに合わせて喘ぎ声が上がる。時間をかけてじっくりと慣らしてから、すでに喘ぎ声に煽られて臨戦態勢な自身を舞白の中へ沈めていく。
「ぁ、ふか、い・・・んっ」
熱の籠った呼吸を繰り返す舞白はどこか嬉しそうだ。
「気持ちいいか?」
「ん。きもち、いい」
「それで?」
「、っと、・・・もっと」
「あぁ」
千羽陽はにやりと笑って舞白の腰に手をかけた。

 意識を失い、くったりと布団に横たわる舞白の顔はどこか満足気で気持ちよさそうだ。千羽陽はそれを見下ろして、小さく笑う。外はもうすっかり明るくなってしまっている。もう少ししたら使用人がやってくるかもしれない。その前に舞白の体を綺麗にしてやろうと千羽陽は立ち上がり大きく伸びをした。

 

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