*逆転ウロボロス Part.RA
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*ちはしろにお兄ちゃん乱入





 千羽陽は朝食のサンドイッチを囓りながら、正面でコーヒーを飲む舞白を眺める。今日のサンドイッチはパストラミ、レタス、スライストマトなどが入った物で、舞白の分にはタマネギのスライスが入っていて野菜が多め、千羽陽の分にはパストラミが多めになっている。付け合わせのコンソメスープにもソーセージが入っていて、いつも通りの美味しさだ。
「千羽陽?どうかした?」
千羽陽からの視線に気づいたらしく、舞白が聞く。
「なんでもない」
視線を逸らして少々口早に答えれば、
「それならいいけれど」
と舞白が微笑む。
 あの初めて舞白を抱いた日から、千羽陽にとって舞白は完全に性的対象となり、なんというか普段の生活の動作ですらもそう見えてしまうようになった気がする。あの後も何回か、椿がいない日で舞白の締め切りが近くない日を狙って行為に及んでいるのだが、さすがは性欲盛んな男子高校生というべきか、性欲が落ち着く様子はない。しかし、多くの負担を強いられるのはどうしても舞白なので、その辺は十分に考慮しようと決めて、回数や頻度に関しては千羽陽なりに気を遣っている。
 最初は舞白に教えてもらいながら拙い手つきだったのも、少しずつ慣れてきたことで最近では、自分なりに進めることもでき、舞白の表情を見て加減をしたりという余裕もでてきた気がする。
 千羽陽はそっと視線を上げてリビングの壁に吊されたカレンダーを見る。一昨日で舞白の小説の締め切りも終わっているはずだし、椿は明後日まで帰ってこない。そして、今日は金曜日。唇の端を少し上げて、残っていたサンドイッチを口の中へ放り込む。もぐもぐと咀嚼して、しっかり飲み込んでから、ごちそうさまと言って席を立つ。使った食器はキッチンのシンクへ置いて、バッグと舞白の作ってくれた弁当を持つ。
「行ってきます」
「いってらっしゃい。気をつけてね」
玄関まで見送りに来てくれた舞白の笑顔に頷きを返して、千羽陽は家を出た。

 千羽陽が学校へ行ったのを見送って舞白はリビングへ戻る。一昨日、編集さんに送った原稿は昨日のうちに修正も終えたから、今日は久しぶりにフリーな日だ。家事を済ませたら、買い物がてらにどこかへ出かけるのもいいかもしれない。そんなことを考えながら席へ戻り、残りの朝食を食べる。今日の朝食も我ながら良い出来で嬉しくなる。
 最初の頃は失敗が多かった料理も回数を重ねるごとに、どの調味料をどのくらいいれるとこんな味という感覚が養われたおかげで失敗をしなくなった。最近では家にいることが多いから、手間のかかる料理なんかも気が向けば作る。
 今日は天気予報で暑くなると言っていたから、早めに買い出しを済ませて家でゆっくりと料理をするのもいいかもしれない。買い出しついでに本を買ってくれば完璧だろうか。
「ごちそうさまでした」
1人でもきちんと手を合わせて、食事を終える。まずはキッチンの片付けから始めることにしよう。

 「ただいまー」
学校から帰ってきた千羽陽がそう言いながらリビングのドアを開けると、美味しそうな匂いがふわりと漂う。
「おかえり」
迎えた舞白はソファーで本を読んでいる。ローテーブルの上にキッチンタイマーがあるのを見ると、どうやら煮込み料理を作っているようだ。
「まだもう少しかかるから、先にお風呂の方がいいかな?外暑いから汗かいたでしょ」
「そうする」
にこにこと微笑む舞白の服装が朝と違うのを見るに、舞白も出かけた後でシャワーを浴びたのだろうか。短く答えて、千羽陽はまずは荷物を置くために自室へ向かった。
 風呂から上がり、家の中用のラフな格好に着替えて再びリビングへと向かえば、ちょうど、夕食の準備ができたところだった。テーブルの真ん中には美味しそうな豚の角煮があり、さっき煮込んでいたのがこれだということが分かる。他にも、サラダやスープ、副菜の小鉢などが並んでおり、今日は舞白が料理をしたい日だったのだろうと推測できる。まぁ、品数が少なくても味は美味しいし、第一に舞白が作ってくれているという時点で千羽陽としては文句をつけるところがないのだけれど。
「ご飯は自分で好きなだけ盛ってきてね」
「分かった」
それぞれにご飯を盛って、席へつく。朝と同じように向かいあって、どちらともなく同じタイミングで手を合わせる。
「いただきます」
よく煮込まれた角煮は絶品だった。

 夕食後に食器を洗うのだけ手伝ってから、千羽陽は一度自室へと戻った。週明けまでの宿題があるので、それだけは先に片付けてしまった方が良い。真面目な性格の舞白はそういうのを気にするのだ。そして、自分自身にも厳しいので、今までに一度も締め切りを破ったことがないらしい。この間、たまたま会った時に担当編集者の人が言っていた。
 ノートを開いて、英文を写し、電子辞書を片手に意味を訳していく。教科書の例文はどうしてわざわざこんな文章をやるのだろうと思う物が多いが、きちんと話の流れがある長文を読むのは嫌いでは無い。まぁ、これも舞白の影響なのだろうけれども。
 指定された部分を訳し終えてしまえば、それ以上をやる必要もないので、ノートを閉じる。机の上もざっと片付けて、意気揚々と向かう先は舞白の部屋。

 コンコン。
部屋の扉をノックすると、中からは
「どうぞ」
という声が返ってくる。扉を開ければ、風呂上がりらしき舞白の姿。先ほどまでのようにきちんとした格好ではなく、Tシャツに短パンというラフな格好になっている。惜しげもなく晒された足は綺麗で白い。
「風呂上がり?」
「うん。さっき上がったところ」
舞白の傍へ行きながら聞けば、舞白が頷く。千羽陽は、舞白の傍に置いてあったドライヤーを手に取る。
「・・・髪、乾かしてもいい?」
「別にいいけれど、面倒じゃない?」
「それはない」
「それじゃあ、お願いします」
千羽陽は舞白の髪に触るのが好きだ。肩に着くくらいに伸ばされた髪は綺麗な灰色をしていて、ふわふわと柔らかい。重さのせいか割とまっすぐになっているが、緩くウェーブがかかっていて、それなりの頻度で美容院に行かないと、量がすぐ増えてしまうらしい。
 ドライヤーのモードは一番強いのではなく、1つ下のケアモードにして、髪を梳きながら乾かしていく。ドライヤーをかけている時、舞白はよく気持ちよさそうに目を閉じる。その安心しきった顔を見るのも髪を乾かす時の楽しみだ。
 髪がきちんと乾いたのを確認して、ドライヤーの電源を切る。それを音で察したのか、舞白がゆっくりと目を開けて礼を言う。
「ありがとう」
「どういたしまして。・・・舞白兄」
「ん?」
名前を呼んで振り返った所で、そのまま引き寄せて唇を奪う。瞬間、驚きから見開かれた瞳は、少しすれば委ねるように閉じられる。角度を変えて、唇をあわせながら、舞白の腰を引き寄せる。
「・・・ふ、ぁっ・・・ちはや?」
呼吸が足りないせいか舌っ足らずになった声が愛おしい。
「だめ?」
答えなんてもう分かりきっているのにわざと問いかければ、
「・・・そんなこと、ないけれど」
と恥じらいつつ、返事がある。
我慢できず床で始めてしまったわけだが、ラグマットがあるとはいえ、このままでは舞白の腰が痛くなってしまうので、少し離れた場所にあったクッションを引き寄せる。人をダメにするクッションなんて通称のそれは、少し前に九十九が舞白にプレゼントしていたものだが、気にしないことにする。
 クッションに舞白を寄りかからせて、髪を拭くために使っていたらしい大きめのバスタオルはまだ使えそうだったので、舞白の尻の下へ敷いておく。そして、左右へと開かせた足の間へ自分の体を滑り込ませる。これで準備は万端だ。
 まずはキスをしながら、舞白の体の形を確かめるように愛撫をしていく。反応の良い、項や鎖骨の辺りを念入りに触れながら、少しずつ下へ下へ移動していく。Tシャツは胸の上までまくり上げて、そこにある飾りを弄る。そうして腹部へ降りてくると、締め切りで忙しかったせいか、僅かに細くなった気がした。そのことに僅かに顔をしかめながらも、やがて手は短パンの中へ侵入していく。
「・・・、んっ」
千羽陽の手の触れる感じにぴくんと舞白の体が反応を示す。大丈夫だと伝えるように軽めのキスをしながらも手は下着の中へ潜り込む。中心はあえて避けて足の付け根をなぞり、短パンや下着を少しずつ脱がせていく。
 最終的には短パンと下着は全て脱がせてしまって、その辺に放っておく。期待に揺れる中心はやはりそのままで、今度は足に触れる。特に日に当たらないせいか、元々の色白な肌のままのそこはとても綺麗だ。愛撫のついでに持ち上げて、太ももの内側にキスマークを残す。皮膚の柔らかい所に吸い付かれ、舞白が悲鳴にも似た声を上げるが、様子を見るに嫌そうということはない。
「舞白兄。気持ちいい?」
にやっと意地の悪い笑みを浮かべて聞いてやれば、薄く涙の膜が張った瞳で千羽陽を見返して舞白が小さく頷く。
 そろそろ良いだろうかと、自室からこっそりと舞白の部屋に移動して隠しておいたローションを手に取る。そのままでは冷たいだろうから、少し手のひらに落として、舞白と視線を合わせながら、後ろを解していく。不安そうにこちらを見る舞白に自分が好きでやっているのだということを示すにはそうした方がいい。
 時間をかけて十分に解してから、一度、指を抜く。相変わらず、小さく声を上げつつもこちらから視線を外さない舞白にそっとキスを落として、力が抜けたところを狙って、自身をゆっくりと挿入していく。衝撃に舞白が息を詰めるのを感じる。落ち着かせるように、手で胸の飾りや、舞白自身を愛撫しながら、その呼吸に合わせて少しずつ奥へと進めていく。
 舞白の喉が言葉にならない音を紡ぐ。千羽陽は全て挿入し終えた所で、一度動きを止めて舞白を見る。千羽陽と視線が合い、にこりと笑った舞白の顔が次の瞬間、何かを見つけて凍り付く。
「舞白兄?」
その変化に驚いて、何かあったのかと後ろを振り向けば、そこには長兄の椿の姿があった。
「・・・え?」
状況を受け入れられず、千羽陽はその場でピシッと固まる。
「あら。いいのよ、続けて」
にこりと笑った椿は舞白の執筆用の椅子にいつものように足を組んで優雅に座っていて、つまりはどこかのタイミングで部屋へ入ってきたのだろうが、まったく気づかなかった。
「千羽陽。固まってないで、きちんと舞白を気持ちよくさせてあげなきゃ。・・・あぁ、ちなみにノックはしたわよ?」
そこは別にどちらでも良かったというか、こういう状況ではきっとノックの音など気づかない。舞白は椿の姿にフリーズしてしまったらしく、その視線は椿に固定されたままになっている。椿はふふ、と笑うと、仕方ないといった感じの顔をして席を立ち、舞白の傍へ移動する。
「大丈夫よ、舞白。これで貴方を嫌ったりしないわ。だから、快感に忠実になっていいのよ」
椿の手が舞白の髪を撫で、自然な動作で椿が舞白に口づける。それは触れるだけの軽いキスなんてものではなくて、凍ってしまった舞白の体を溶かすように何度も何度も落とされ呼吸を思考を簡単に奪っていく。椿が離れた後の舞白の瞳は熱に浮かされてぼーっとしていた。
「千羽陽もいつまでそうしているつもり?ちゃんと動いてあげなきゃだめよ?」
そう言った椿の手が、舞白の後孔から微かに見える千羽陽自身の付け根をなぞる。まさか長兄からそのような場所に触れられるとは思っていなかった千羽陽は、急激に襲った快感が何なのか分からないままに舞白の中へ白濁を放出した。それにつられて、舞白もイったようで、舞白自身から出たそれが腹部を白く汚している。
「あら。随分とこらえ性がないのね?」
「いや、これは・・・」
「千羽陽。そこに手をつきなさい」
椿が指を差したのは舞白が寄りかかっているクッションの左右。逆らうこともできず、千羽陽は、舞白に覆い被さるように左右へと手をつく。クッションの大きさもあって、顔の目の前に舞白の鎖骨がある。
「ぅわっ」
「随分と色気のない声ね」
椿は呆れるように言っていたが、いきなり後孔にローション付きとはいえど、指が挿入されてきたらそんな声も出ると思う。むしろ、悲鳴的な大声を上げなかっただけマシだと思う。
「・・・あの、まさか、」
「相手の気持ちになるということも大切でしょう?」
椿はどこまでも有言実行というか、決めたことは突き通す所があるので、明言された時点で、あぁこれは死んだなと思った千羽陽であったが、他でもない長兄の命令なので動けるはずもなく、なされるままでいるしかない。
 ゆっくりじっくり時間をかけてならされたそこへ椿が入ってくる。その感覚に千羽陽は頭が真っ白になっていくのを感じていた。あの、椿が、自分とそういう行為をしている。その現実をうまく受け入れられないのだろう。しかしながら、そんな千羽陽に対しても容赦なく、椿は奥へ奥へと進んでいく。その反動はまだ繋がったままの舞白へも伝わるようで、すぐ上から喘ぎ声が聞こえてくる。それに重なるのは認めたくない部分もあるが、おそらく自分の喘ぎ声。
 最後の方はもう羞恥やら混乱やら快感やらで頭が真っ白で、何がどうなっているのかは分からなかったが、とりあえず、気持ち良かったということだけは強く記憶に残った。
 ほぼ同時に3人ともイって、そのまま気を失った様子の千羽陽から自身を抜いて、椿は千羽陽の頭を撫でる。
「あの、・・・兄さん?」
そんな椿に声をかけたのは、千羽陽の下敷きになっている舞白。そのまま千羽陽が気を失ってしまったので、こちらはまだ繋がったままだ。
「どうかした?」
「どうかしたも何もないですよ、どうしてこんなことに?」
息は荒いものの、舞白の思考は混乱が落ち着いてはっきりとしてきたようだ。
「あら、簡単なことでしょう?」
「え?」
「仲間はずれって寂しいのよ」
そう言ってにこりと笑った椿の笑顔に舞白はなんかもうどうでも良い気がした。


 

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