小説 | ナノ


▼ 香り



「なーんか、違和感……」
「え?」

雑談中、マコトは急に鼻をひくつかせて、私の体に近付いてきた。
まさか、汗臭いだろうか。いろいろと不安が過るが、されるがままだ。

「えっ、なに?なんですか?」
「いやね、名前ってこんな匂いしてたっけな〜って」
「変態みたいだね」
「人聞き悪い!」

これが異性なら間違いなくセクハラだろう。まぁ、親友なのでそこは許そう。
マコトは、うーん、と唸りながら考えている。香水変えた?とか、シャンプー変えた?とか、いろいろと質問責めが来たが、全部NOだ。

「んー……なんか嗅いだことあるんだよね、この匂い。あんまし良いイメージじゃない気が……」
「臭い?」
「いや、品がある感じで良い匂いのはずなんだけど……なんだろ?」
「さぁ?」

そもそも自分の匂いがどんなのかも分からない。変わったなんて、自分でも気付かなかったくらいだ。

「おや、お二人揃って立ち話ですか?」

二人して悩んでいると、気配も無しにハザマさんが横に立っていた。

「うわっ!ハザマ大尉……ん?」
「こんにちは、ハザマさん」
「ほらほら、ナナヤ少尉。貴女、まだ報告書出していないでしょ?今日中にお願いしますね」
「……あ、はーい。今持ってきます。……んじゃ、また後でね」
「うん、わかった」

軽く手を振るマコトに、此方も振り返した。何かに気づいた様子だったが、どうしたんだろう。

「……危うく、勘づかれるところでしたね」
「何が?」
「おや、本当にお気づきでない」

こっそり耳打ちするハザマさんは、呆れた様な声色だ。

「だから、何が?」
「名前さん。昨日、私と何をしたか覚えていますか?」
「うっ……まぁ……」

昨晩の記憶が蘇る。普段のハザマさんでは想像できない様なレベルで求められた。とは言っても、彼は致す時は毎回、普段とは別人の様に甘えたり、激しかったりするけれど。
ただでさえ近かった距離がまた近くなり、耳に唇がくっつくような近さで肩に力が入った。

「私の匂い、移っちゃいましたね」

顔が熱くなった。
ハザマさんを見ると、羞恥心の欠片も無い。それどころか、いつも以上にニヤけ顔だ。

「それと、首筋の跡は上手く隠してくださいね」
「えっ?えっ!?嘘でしょ!」
「ご自分で確認してみたら良いのでは?」

すぐさま持っていた手鏡を取りだし覗いたら、小さい跡が見えた。恥ずかしさと焦りでどうにかなりそうだ。マコトにバレていないようにと祈り続ける。そんな焦る様子を面白そうに笑うハザマさんは、本当に性格が悪い。





END

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