女中の私には、何も出来ない。あの人の事を遠くで想うだけ・・・。
片倉様に恋してしまった。見た目は強面だが、時に見せる優しい笑顔に心を奪われたのがキッカケ。
だが、所詮私は女中の身。片倉様の方が遥かに身分が上。どんなに伝えたくても、絶対に叶わない恋なのだ。
「片倉様・・・・・」
嫌われるのが怖い。毎日そんな事しか考えられない。
「はぁ・・・・・」
溜め息を付けながら長い廊下を歩く。私は何がしたいのだろう。いつか片倉様がこの思いに気付いてくれるなんて・・・・・絶対に有り得ない。
――ドン!
「きゃっ!も、申し訳御座いません・・・・・っ!」
出会い頭で誰かにぶつかってしまい、慌てて顔を上げると・・・・・。
「大丈夫か?」
片倉様だった。
「わ、私は平気です!」
「・・・目、赤くないか?」
「め、目にゴミが入りまして・・・・・」
「そうか、よく洗えよ」
「はい、し、失礼します」
私はそう言って、逃げるようにその場を後にした。
一緒にいる事が苦しくて、辛くて、我慢出来ずに涙が溢れ出た。
end.
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琉貴斗様へ、相互記念に書かせて頂きました。切なめにしたつもりだけど、果たしてどうだろうか・・・・・遅くなってスミマセンでした;;
20120526.