春は出会いと別れの季節と言われている。私はそんな時期が正直嫌い。
今年はたくさんの先生達が異動になった。
その中に聞きたく無かった名前――英語科の政宗先生がいた。
私が入学した時に一目惚れしてしまった人。低音で少しハスキーな声も、黒板に板書する時の綺麗な手も愛おしくてたまらなかった。そんな政宗先生が異動・・・・・。それは私の時間が止まったようだった。
離任式で挨拶をする政宗先生。でも私はその言葉が耳に入らず、目の前が涙で霞んでいた・・・。
政宗先生の周りにはたくさんの女子生徒が集まっていた。
私はただそれを見ることしか出来なかった。
時間が過ぎ、気分が晴れないまま荷物の整理をすると、ポケットの中で携帯が震えた。ディスプレイには"政宗先生"と表示されていた。慌ててメール画面を開くと、
『まだいるなら英語科室に来い』
と書かれてある。鞄を取り、急いで向かう。
ガラガラ―
「先生っ!」
息を切らし、髪はボサボサのまま勢いよく扉を開けると、そこには捜し求めていたあの人の姿。思わず涙が溢れ出す。
「名前、廊下は走るなよ」
「せ・・・んせ・・・ぐすっ」
「おい、泣くなよ」
「だって・・・ふぇっ、さ・・・寂し・・・くて・・・ぐすっ」
泣きじゃくる私を慰めるかのように優しく頭を撫でてくれる先生。その手は心地よくて温かかったが、その優しさで更に涙が溢れ出てしまう。
「sorry.急にこんなことになって」
「ぐすっ・・・急ですよ、本当に」
「お前といる時間が多かったからな。Thank you.名前」
叶うならこのまま時間が止まって欲しい。この温もりをずっと味わっていたかった。
「・・・名前、ちっと話を聞いてくれ」
「え?」
「お前はいい生徒だった。最高の教え子だ。俺がいなくても自信を持って行け」
その言葉は温かかった。思い起こせば、政宗先生のおかげで私は変われたんだ。ありがとうと言いたいのは私の方だ・・・・・。
「先生、ありがとう。それと・・・」
「Ah?」
「・・・・・・ずっと大好きでした」
今まで言えなかった言葉。
最後だから、桜吹雪が舞うこの教室で、勇気を出して言った。
その時の私の顔は、涙でぐしゃぐしゃだっただろう・・・・・。
end.
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切なくしたつもり。
先生に恋してしまったけど叶わなかった感じです。
書き慣れないのに切ないのを書いてしまいました。
こういうシチュエーションって難しい…。
20120329.