片倉先生が教室に入り、私は廊下に1人取り残された。けど、もう不安な気持ちは無い。片倉先生の手の温もりがそんな気持ちを消してくれたから。
(でもどうなっているのか気になる…)
予想以上に教室が静かで、本当に生徒がいるのだろうかと思った。
「――塚本、入れ」
「は、はい!」
遂に呼ばれた。一呼吸入れ身形を直し、扉の向こうに足を踏み入れた――
瞬間目の前に広がる光景…と沈黙。数え切れない視線が私に突き刺さる。
「ぁ、えっと、塚本小晴です。宜しくお願いします!」
……うわぁ、メッチャ見られてる。
「……やべぇ女子じゃん!」
「え?」
「女子来るとか珍しくね?しかも可愛いし」
「え?え?」
「俺、前田慶次。宜しくな小晴ちゃん」
「あ、はい」
「俺は長宗我部元親。宜しく頼むぜ!」
「俺様は猿飛佐助。こっちは真田の旦那。宜しくね小晴ちゃん♪」
「某は真田源次郎幸村と申す!」
「よ、宜しくお願いします」
な、なんか大勢迫ってきましたよ…?確かに見た感じ男子の方が若干多く、その後も物珍しい目でみんなが私を見ていた。
「お前ら静かにしろ。じゃあ塚本は、そこの席だ」
「はい」
片倉先生に指示された通りの席に座る。隣の子は出来れば女子がいいなぁー…なんて――
思いは届かなかった。隣にいるのは男子。そしてめっちゃこっちを見てくる…………。
「Ah?何で目逸らすんだよ」
「べ、別に逸らしたつもりは…」
「まあいい。俺は伊達政宗。仲良くしようぜ?」
そう言って彼の整った顔から笑みが零れ、その表情が何故だか印象に残ったのだった。