「…はあ」
小一時間でこんなに疲れるなんて思ってもいなかった。無事に挨拶は終えたものの、その後質問ラッシュに襲われた。話し掛けてくれるのは嬉しいけど、流石に疲れる。私は机に突っ伏していると、頭上から声が聞こえた。
「小晴」
「ん?あっ、伊達くん」
「その"伊達くん"はやめろ。政宗でいい」
「ごめん…」
私の左隣に座ってる政宗くんだった。やっぱりかっこいいな。この人は世間で“イケメン”って言われる人なんだろう。
「…何だ?俺に見とれてるんか」
「ち、違うよ!」
笑いながら見下す彼に転校早々からかわれる私。何をやっているんだ。はぁ。と溜め息をつくと政宗くんは私の前にしゃがみ込み、その綺麗な顔が目の前に現れた。見つめられて顔に熱が集中するのが嫌と思う程わかる。
「な…何?」
「何でもねぇよ」
「………?」
彼は何処かへ行ってしまった。何だったんだろう・・・さっきのは。と、チャイムが木霊する中で私はそう思った。
***
ようやくお昼休みに突入した。何だか時間が長く感じる。もうお腹ペコペコ。婆裟羅学園は食堂があるらしく、私は誰かに付いて行こうとしたが、殆どの人が颯爽と行ってしまった。みんな相当お腹空いていたのかな?
(仕方ない。1人で行ってみよ)
向こうで誰かいるだろうと信じ、私は教室を出た。
「……あれ?」
どうやら迷子になってしまったようだ。此処は何処?私は誰?っていうのはこういうことなのか。この校舎は無駄に広いし、さっきから同じ道をぐるぐる辿っている気がする。このままじゃご飯どころか教室にも帰れなくなっちゃう。どうしたらいいんだ私。
「…ーん。小晴ちゃーん!」
誰かの声が聞こえた。
「あ、…前田くん?」
「此処にいたのか。捜しちゃったよ!」
前田くんこと――前田慶次くんがパタパタとこっちに来た。
「小晴ちゃんがいなかったから捜しちゃったよ。まさかこんな所にいたなんてねぇ」
「あ、えっと……何かごめん」
「いいっていいって!食堂あっちだから一緒行こうぜ」
「うん」
前田くんはどうやら迷子になった私を捜しに来てくれたようだ。私は前田くんと色々な話をしながら隣りを歩いていた。
前田くんのおかげで無事に食堂に到着した。更に前田くんは『一緒に飯食おうぜ』とこんな私を誘ってくれた。なんていい人なんだ。前田くんが連れてくれたテーブルの先には、これまた濃い面子が勢揃いしている。政宗くんに佐助くん、幸村くんや長會我部くんなど。こんなキラキラした男の子達に囲まれたら私、居辛くて呼吸困難になるよ。
「…隣り空いてるぞ」
「えっ?」
うわ、同じクラスの金髪美人さんだ。スタイルと色気半端無いし、目のやり場に困る。私は『お邪魔します』と一言添えて、金髪美人の子の隣りに座る。
「あいつ等の中だとむさ苦しいし居辛いだろ?私で良ければ一緒に食べよう」
「あ、ありがとう」
この子本当に私と同い年なのか?この学園にこんなに優しい人がいたなんて。日本も捨てたもんじゃないなと強く実感した。勇気を出して名前を聞くと―かすがと名乗った彼女。私も自己紹介をするが、あまりの美しさに見入ってしまう。もうお姉様って呼びたい。その後もかすがちゃんとお話しながらお昼ご飯を食べた。何とか誰かと仲良くなれて、少し安心したお昼休みだった。