甲斐の国って確か戦国時代のあたりだった気が。戦国って…教科書に載っている、あの戦国時代?もしかして私はその戦国時代にいるの?否、これは夢かもしれない。
――ぐいっ!
「っ!ぃ…たぁ」
……嘘でしょ?ほっぺを抓って痛かったから…夢?何で?どういうこと!?
「…ーん。小晴ちゃーん?」
「は、はい!?」
「どうしたの1人でブツブツと」
「えっ!?聞こえてました!?」
「丸聞こえだし、頬抓ってたのも見たよ」
「えっ嘘!?」
独り言が全部口に出ていたなんて、恥ずかし過ぎて顔から火が出そう。
「…プッ、ははははは!」
「ちょっ何で笑うんですか!?」
「だって小晴ちゃんの百面相が、面白くてつい」
「だからってそんなに笑わなくても!」
佐助さん、お腹抱えて笑っているし。
「…ー。佐助ー!」
「えっ?何か聞こえる?」
「おっ、あれはもしや旦那かな?」
「旦那?」
佐助さんが指差す方角を振り返ると、何か影が見えた。
「佐助ー!」
「真田の旦那ー!」
真田の旦那って人がすぐ先まで来たが――
(えっ!?)
私が想像していたイメージとは真逆な若い男の人で、しかも馬に乗っている。もっと厳つい感じの人かと思ったが、寧ろ私と同年代ぐらいだった。
(この人全身真っ赤…)
悠々と馬に乗る姿に私は呆気に取られてしまった。
「佐助、ここにいたのか。…って、ん?」
どうやら私に気付いたらしく、真田の旦那って人は私を凝視してくる。うわぁ、なんか怖い。
「旦那、そんなに見ないの。この子怖がってるじゃん」
「えっ、えっと、あの…ん?」
よく見ると真田の旦那さんはわなわな震えていた。
「あの…?」
「………は…はは…は」
「は?」
「破廉恥でござるぅあ!」
「ええーっ!?」
「はぁ!?」
(出会ってすぐに何で破廉恥!?)