確かに私の部屋にいたはず。なのに何で森の中にいるの…?いや、これは夢なのかもしれない。
「誰か、いないかな」
今私は何処にいるのかを知りたい。誰か人がいれば聞き出せるんだけど…。
―――ザクッ!
「きゃあっ!!?」
何かが私の横をすり抜けた。恐る恐る足元を見ると、黒いものがあった。それをそっと拾い上げる。
「…何これ?」
それは黒くて先が尖っていた。何か書いてあるようにも見えたが、よく分からなかった。
「こんな物何処から降って来たのよ」
「あれ?掠ったか」
「えっ!?誰……っきゃぁあ!!?」
頭上から声が聞こえたと思えば目の前に人。吃驚して思わず叫んでしまった。明るいオレンジ色の髪に迷彩柄の服を身に纏った男の人だった。
「ぁっ、あ、あなたは誰ですか!?」
「それはこっちの台詞。女一人で何でこんな所にいるのさ」
「私にだって分かりませんよ!気付いたら此処にいたんですから!」
「?ふーん…」
…あれ?心なしか冷めた目で見られている気が。
「っそうだ!これ、あなたのですか?」
さっきの黒い物体を迷彩服の人に渡す。
「あっ、俺のクナイ。実は上からアンタを見つけて、怪しいなって思って投げてみたんだ」
「クナイ!?危ないですよ!!私の真横通ったんですから!」
「なるほどねぇ」
迷彩服の人は呑気に笑いながらそう言った。しかもクナイとか言って何でそんな物持ってるんだろう。
「そう言えば、アンタ名前は?」
「あっ、塚本小晴です。」
「小晴ちゃんね。俺様は猿飛佐助」
「佐助…さん」
「そう言えば小晴ちゃんは何処の人間?」
「え??」
「姓があるって事は身分が高いんでしょ?」
「みっ、身分?」
さっきまでのちゃらけた感じが一変し、佐助さんは静かにそう言った。苗字があるのは当たり前じゃないの?
「あの…ここは日本ですよね?」
「そうだけど、小晴ちゃんのその格好始めてみるから」
初めて見る服?至って変な格好はしていないつもりだ。そんな事言えば佐助さんの格好だってちょっと変わっているのに。不思議に思い、勇気を出して聞いてみる。
「あのっ!此処は何処ですか?時代は何時代ですか?」
「?…此処は甲斐の国だけど」
「………え?」
甲斐の国?どういうこと…?
20120115.加筆。