宴はかなり盛り上がっているみたい。広間からは賑やかな声が聞こえてくる。
そんな中私は、広間を抜け出して縁側で夜空を見上げていた。宴の最中何度かお酒を勧められ、キリが無かったから申し訳無いがこっそりと逃げ出したのだ。外は涼しい風が吹いていて気持ちいい。
「それにしても、星が綺麗だな……。」
見上げたその先にはたくさんの星が光輝いていた。平成では見られないような、満天の星。それを見ていると、何だか安心出来る。手を伸ばせば届くんじゃないかな…なんて。
「ここにいたのか、小晴」
「っ!…お、お館様!」
背後から聞こえた聞き覚えのある声に振り返ると、そこにはお館様の姿が。そして無言で私の隣りに座る。
「…空、綺麗ですね」
「小晴のいた世界にもこんな空は見えるのか?」
「見えますけど…こんなに綺麗には見えないです」
「ほぅ…」
ふと隣りに座るお館様に目を向ける。鎧を着ていないせいか、いつもより小さく見える。
「…小晴よ」
「はっ、はい!」
「くどいようだが、お主はもうこの国の…いや、武田家の人間じゃ。皆お主のことを歓迎してくれてるぞ。」
「えっ…」
「故郷が恋しいかもしれぬが、ここにいる時はわしを父親だと思ってはくれぬか?」
私の頭に乗せられたお館様の手は、髪を優しく掻き混ぜる。その感触は、両親や兄と同じ。気持ち良くて、温かくて。そんな気持ちが高まって、目から涙が勝手に溢れてきた。
「…ぐすっ、おや…か、さまっ。ぐずっ…ったし、私、ここにいて…いいん、ですか?」
「勿論」
この人は本当に温かい人だ。言葉も、私の頭を撫でる手も、全部が温かい。私は暫く涙が止まらなかった。