「小晴殿、こっちでござる!」
「ま、待ってください幸村さんっ!」
幸村さんの後を必死に追いかけ、ようやく追いついた。運動不足の体にはちょっとキツかった。息を整えている中、幸村さんが障子の前で足を止める。
「幸村さん、一体何があるんですか?」
「今わかるでござるよ」
「え?」
どういう事か全く分からないまま、幸村さんは障子に手をかけ開けられた。
「わぁ…!」
その光景に驚いた。豪華な食事がズラリと並び、お酒を片手にどんちゃん騒ぎしている武田軍のみんながいた。勿論、その中にお館様や佐助さんの姿もある。
「な…に、これ?」
「お、主役登場ー♪」
「待ちくたびれたぞ、小晴」
「主役?」
「これは小晴殿の歓迎の意を込めての宴でござる」
「ふーん…え、私の!?」
「大将の案でね、準備してたんだよ。ほらほらそんな所にいないで、こっちおいで」
「あ、はい。失礼します」
佐助さんに手招きされ、広間へと足を踏み入れる。でも何処に座ったらいいんだろう。男の人に囲まれるのは、正直恐いな…。かと言って、避けるのも申し訳無い。どうしたらいいんだ私。
「小晴ちゃん、こっち来る?」
「え、い、いいんですか?」
「遠慮しないでよ。俺様の隣にいれば安全だよ」
「そんな感じはしないけどな…」
「なんか言った?」
「いっいいえ。じゃあ、失礼します」
ゆっくりと隣に座る。…なんか緊張して変な汗掻いてきた。
「大丈夫?緊張してんの?」
「あ、はい。ちょっとだけ」
「可愛いねー」
「ちょっ、頭撫でないでください!」
「小晴ちゃんの髪綺麗だねー」
「恥ずかしいですって!」
「あらら、ちょっとやり過ぎたかな?ごめんごめん」
…佐助さん、私の事を完全に子供扱いしている。これでももうすぐ二十歳なのに。
「小晴も来たところで、宴を始めようぞ!!」
「「「おぉー!!!!!!!」」」
お館様の言葉で、一気に盛り上がった。大学の新入生歓迎会みたい。武田軍の人達の優しさを改めて感じた。私の為だと言ってくれたし、折角だから楽しませて貰おう。皆さんと仲良くなれる絶好のチャンスかもしれないし、どんちゃん騒ぎしちゃおう!!