目の前には障子。その向こうにはお館様がいるらしい。もう私は逃げられないようだ。
「じゃあ開けるよ」
「ままま待ってください!心の準備が…」
「なんとかなるって」
「そんなこと言わないでくださいよ」
「怒らない怒らない。可愛い顔が台無しだよ?」
「なっ…!?」
突然何言い出すんだこの人!そんな事言われたら私の心臓が持たない。
「大丈夫。お館様はいい人だから」
ぽんっと佐助さんの手が私の頭に置かれた。出逢ってから初めて見る佐助さんの優しい笑顔に、私の顔は徐々に熱を帯びている。
「そろそろ開けるよ。あんまりお館様を待たせる訳にはいかないから」
「は、はい」
シンッと静まる。何この沈黙。
「お館様、連れて参りました」
「………うむ、入るがよい」
うわ、来ちゃった。恐らく今のがお館様の声だろう。その声を聞いた瞬間、さっきまでの落ち着きが何処かに行ってしまい、また緊張してきた。でもここまで来たなら当たって砕けるしかない。もう吹っ切れたよ私は。
扉が開き、ゆっくりと目を見開くと、驚いた。物凄く広い部屋の中で、お館様であろう人が威厳を感じさせるかのように堂々と座っていた。その前にはさっきまでリーダーっぽかった幸村さんが跪いている。その光景に唖然としつつ、怖くて手が震えてしまう。
「ほら、入って」
「あ…はい」
私にしか聞こえない程の佐助さんの小さな声に促され、返事で思わず声が裏返ってしまった。スカートの裾を握り締めながら、ゆっくりと足を踏み入れる。
「し、失礼しま…きゃっ!?」
――ずでーん!
…嘘だ。私、コケた?こんな大事な時にやってしまった。
むくりと起き上がると、そこにいる人達みんなが目を丸くして私を見ている。うわあ恥ずかしい。私の馬鹿。
「すすすみません!緊張しちゃって…」
「…ふはははは!可笑しな女子じゃ。怪我は無いかの?」
「え?あ、はい。大丈夫です」
あれ?かなり強面な感じの人が笑った?お館様の見た目とのギャップに、思わず固まってしまった。
「なら良い。とりあえず座るのじゃ」
「し、失礼します」
恐る恐るお館様の前に座る。勿論正座で。
対談がいざ、始まる。