ドンドン奥の部屋へと連行されて私はその一室に入れられ、幸村さんと佐助さんは何処かへ行ってしまった。取り残された私は、一気に不安な気持ちに襲われる。とんでもない人達に捕まってしまったんだと後悔するばかり。さっきから溜め息しか出ない。
「…誰かいないのかな?」
障子をそっと開けて周りをキョロキョロと見渡すが、誰かの姿は何処にも無い。
「…もしかして逃げられるか?」
やった、私も自由だ!そんな気分で廊下に足をかけた瞬間―――
「いけませんよ!」
「きゃぁっ!!!?」
……吃驚した。心臓が止まりかけた。声のする方を振り返ると、女の人が私を見ている。
「小晴様、なりませぬよ。此処でお待ちください」
「あ、はぁ…。失礼ですが、どちら様ですか?」
「はっ!失礼しました!私は女中のちよと申します」
“ちよ”と名乗った女中さん。凄い、本物初めて見た。お爺ちゃんが見ていた時代劇でしか見たこと無いから、ちょっと感動してしまった。
「すみません…えっと、そ、外の空気を吸いたくなって」
「まぁ、そうなんですか。ですがもう少しお待ちください。佐助様が来るまでと言われましたので」
何とか誤魔化せた。それよりも佐助さんの仕業か…やられた。見張りを付けていたなんて思わなかった。
「それよりも、小晴様のお着物は珍しい形をしてらっしゃいますね?」
「えっ?ぃ、いやっ…その…」
「小晴ちゃーん、いるー?」
「あ、佐助さん」
ある意味ナイスタイミングで来てくれたのね。
「あれ?ちゃんと待ってたんだねー?」
「逃げられないようにしたのはあなたでしょ」
「あははは」
「いやいやいや、笑い事じゃないですって」
「はいはい。わかったわかった。それより、準備出来たから行くよ」
「え?…何処にですか?」
「何言ってんの。お館様の所でしょ」
…そうだった。そんな大事な事を忘れてた。今の私は余所者扱いされている。余所者としてこの城の城主に当たる人の所に連れてかれる。最悪の場合、殺されるかもしれない状況に置かれているということだ。
「よし。お館様が待ってるから、さっさと行くよ」
「わっ…ちょ、急に腕を引っ張らないでくださいー!」
また佐助さんに腕を引っ張られ、ちよさんにペコペコと頭を下げながらその場を後にした。