空を泳ぐ雲 | ナノ






十年バズーカで十年後の世界に飛ばされてしまい、何故か戻れなくなっていることがわかった。草壁さんの話では、伊織が倒れているところを草壁さんが偶然見かけて保護してくれたらしい。相変わらず優しい人だなぁ…って思っている場合じゃない!



…雲雀さんの姿が見当たらない。



かれこれ30分程時間が経っているが、肝心の本人が何処にもいない。雲雀さんに居候の許可を得なければ伊織はずっと野宿をする羽目になるだろう。



「はぁ…何処にいるの?」



走り続けた。野宿するのを何とか避けたいというのと、単純に雲雀さんに会いたかった。心の中で雲雀さんを求めながら曲がり角を通ろうとした―――



――ドンッ!



「きゃっ!」



誰かにぶつかってしまった。ぶつかった反動で尻餅を付いた。



「いたた…」



ヤバい。お尻がジーンと痛い。痛いお尻をさすりながらゆっくり上を見上げると、



「あ」



雲雀さんだった。まさか出会い頭で会うなんて、ちょっと恥ずかしい…。



「君、前見て歩きなよ」



そんな無理だよ。出会い頭だったし、あなたを捜索するのに必死だったんですから。と心の中で突っ込みを入れる。



「いつまでそこに座ってる気?」

「え?」

「ほら」



…何ですかその手は。



変わらない表情で伊織に手を差し伸べてくれる雲雀さん。わぁ…こんなこと初めてされたよ。嬉しいけど何処か恥ずかしくて、体中の体温が顔に集中してしまう。ぎこちなく手を前に出し、雲雀さんの手に触れた。流石大人だなと感じられる大きな手は、少し冷たかった。



「あ、ありがとうございます。あとすみません」

「いつまでも座られたら邪魔だからね」

「う…」



出た。雲雀さんのこの憎まれ口。でもそこが雲雀さんらしくて大好きなところでもある。(決してマゾではない)



「じゃあ、僕は行くよ」

「あ、待ってください!」



咄嗟に雲雀さんを引き止める。居座らせてくれと言うだけなのに、いざ本人を目の前にすると、ドキドキしてしまう。



「あ、あのっ……お、お願いします!伊織を此処に居座らせてください!」



言えた。伊織やったよ!



心の中でガッツポーズをする一方で、いつもと変わらない表情で見下ろしている。



「僕は群れるのが嫌いなのわかってる?群れるつもりなら咬み殺すよ」

「そんな気はありません!出来る限り邪魔にならないようにしますのでお願いします!何ならお手伝いだってしますとも!」



自分でも何言っているんだと思う程、必死に言葉を集めて説得する。



「…どうやら本物みたいだね」

「え?」

「君は本物の森咲伊織のようだね」

「…?」

「君の好きにしな。僕には関係ないから」



そう言って微笑みながら、雲雀さんはスタスタと何処かへ行ってしまった。正直、雲雀さんのさっきの言葉の意味は理解出来なかった。でも確実にわかったのは伊織は此処にいてもいいんだということ。凄く嬉しかった。やりましたよ草壁さん。小さくガッツポーズをしながらこの喜びを噛み締め、足早に雲雀さんの後を追う。



こうして無事に風紀財団に居候させて貰う事になった。

 


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