空を泳ぐ雲 | ナノ






「ふんふんふーん♪」



鼻歌を唄いながらスキップする。伊織には毎日楽しみな事がひとつある。





「今日も雲雀さんいるかなー?」



それは並盛中学風紀委員長の雲雀さんこと、―雲雀恭弥に会うこと。



雲雀さんは伊織が先輩に絡まれている時に助けてくれた。本人は”群れている奴らを咬み殺しただけ”って言ってたけど、それでも伊織にとっては嬉しかったことだ。それをキッカケにちょっとでも雲雀さんに近付きたかったから、風紀委員に入り、雲雀さんの後を追いかけた。



学校の門をくぐり抜け、応接室へ一直線に向かう。



「雲雀さーん、おはようございます!…ってあれ?」



応接室は静まり返っていた。そこには今会いたいあの人はいなかった。



「何だぁ、いないのかぁ…」



寂しさを感じつつ、教室に向かった。




***

それからずっと探し回ったが、雲雀さんには会えなかった。こんなことは初めてだった。雲雀さんの顔が見れないだけで、こんなに寂しくなってしまう伊織は可笑しいのかな?大好きな雲雀さんの声が聞きたい。お話したかったなぁ…。



「はぁ…つまんないの」



見上げた空は真っ青で雲がひとつふたつ優雅に浮かんでいた。その雲が雲雀さんに見えて、なんだか遠い感じがした。



「雲雀さんは伊織のこと、何とも思っていないんだろうなぁ…」



あぁ、もう全てがネガティブ思考に繋がっちゃう。



…もうやめた。これ以上気にしてもしょうがない!明日は大丈夫だって期待しよう!落ち込んだ気分からようやく吹っ切れ、もう一度空を見上げる―――



「…………ん?」



何か黒いものが見え、その物体はどんどん大きくなっている気がした。



「え?何!?もしかして、ラ○ュタ!?」



……ではなかった。



そのシルエットは細長い筒状の形をしていた。心なしかこっちに来てるような……。



「にっ、逃げなきゃ!っ、え…?」



……足が動かない。



どうしよう!逃げられない!?迫ってくる物体はもうすぐそこまで来ていた。



(誰か助けて…雲雀さんっ!)





――バン!



一瞬、目の前が真っ暗になった―――

 


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