何とか居候の許可を貰えた。こうして伊織は元の世界に戻れるまで、雲雀さんと一緒に生活することに。これって・・・雲雀さんと同棲?やだ、考えていたら恥ずかしくなってきた。でも内心は大好きな雲雀さんと一緒で物凄く嬉しい。これからの生活が楽しみだったりする。
時間が経って今は夜。外は暗かった。
「お腹空いたなぁ・・・」
さっきから腹の虫が治まらず、食べ物を探しに部屋を出た。が、この基地はやっぱり広すぎる。なかなか雲雀さんに出会えない。腹の虫は相変わらず五月蝿い。このままだと空腹で倒れちゃいそう。誰か助けて。
「・・・ん?」
何処からか美味しそうな匂いがした。その匂いにつられ、部屋を出る。
「いい匂い・・・・」
匂いを頼りに進んでいく。この匂いは多分和食だろう。
「ここかな?」
そーっと戸を開け、中の様子を窺った。
「・・・・・草壁さん?」
草壁さんらしき姿が見えた。よく見ると台所に立っているような感じだった。もしやいい匂いは此処からか?声かけちゃおうか。でも邪魔になっちゃうかな?・・・・いいや。声かけちゃえ。
「あの、草壁さん」
「ん?・・・何だ森咲か。どうした?」
「あっ、いや、その――」
ぐぅぅ・・・・・。
「あ」
「・・・・・」
最悪。タイミング悪すぎる。恥ずかしさで顔が真っ赤になってしまう。穴があったら入りたい気分。
「す、すみません」
「腹減ったのか?」
「はい・・・」
「今飯を作っているからもう少し待て」
「っ、はい!実はいい匂いするなーって思って、此処に辿り着いたんですよ」
「そうか。じゃあとびきり美味い飯作ってやるぜ」
「やったぁ!」
***
「出来たぞ」
「わぁ!凄い!」
出来上がった草壁さんの手料理は、凄く美味しそうだった。盛り付けも綺麗で、見栄えもいい。強面な顔からは想像もつかないって。
「何か言ったか?」
「いいえ何も!」
「まぁいいか。森咲、悪いが恭さん呼んで来てくれねぇか?」
「了解っ!行ってきまーす!」
ピシッと敬礼をし、伊織は走り出した。
「雲雀さーん。ご飯出来ましたよー・・・・あれ?」
雲雀さんの部屋の前で呼ぶが、返事が全く無かった。気になって襖に手をかけ、そっと中を覗く。其処に雲雀さんはいたが、どうやら寝ているようだ。起こさないように静かに近付き、雲雀さんの顔を覗き込む。やっぱり綺麗な顔してるなー。見てて惚れ惚れしちゃう。やばい、ニヤけそう。こんな間近で雲雀さんを拝めるなんて伊織幸せ過ぎる。(決して変態ではない)
――っと、しまった。本来の目的を忘れるとこだった。
もうちょっと拝みたかったけど、こんな所で油売ってたら折角のご飯が冷めちゃう。
「雲雀さん、起きてください」
肩をゆさゆさと揺さぶる。でも起きる気配が全く無い。規則正しい寝息だけが聞こえる。
「ご飯ですよ。起きないと雲雀さんの分伊織が食べちゃいますよ」
・・・・・・起きない。雲雀さんならちょっと肩を触れるだけで起きそうなのに、余程疲れているのだろうか。何だか起こすのが可哀想になってきた。もうちょっと寝かせてあげようかな。ゆっくりと立ち上がり、その場を離れようと――
「何処行くの?」
・・・あれ?今雲雀の声が。これは幻聴かな?幻聴だろう。伊織も疲れているのかな?
「僕を無視するの?」
「・・・起きてたんですか」
「起きてちゃ悪いの?」
「いや、悪くはないですけど」
「そう」
「それより、ご飯ですよ。早く来ないと伊織が食べちゃいますよ」
「太るよ」
「なっ、失礼な!雲雀さんなんかに言われたくないです!」
「僕の顔を見てニヤニヤしていた君がよくそんな口叩けるね」
「う・・・・・」
まさかのバレていたなんて。やっちゃった。あぁ、恥ずかしい・・・。
「伊織行きますから、早く来てくださいね」
雲雀さんに背を向け、早足で部屋を出て行き障子を乱暴に閉める。閉めたと同時に体の力が抜けていった。
「・・・はぁ」
そしてその場にへたり込んでしまった。