吃驚した。世の中あんなに背が高い人いるんだ。て言うか、いつの間にあそこにいたのだろう。私が気付いていなかっただけか?お菓子選びに気を取られていたんだきっと。そう考えているうちにストバス公園が見えてきた。
「あっ!壬琴ねーちゃん来たぜ!」
「みんな、遅くなってごめんねー!」
そう。一緒にバスケをする知り合いの子達とは、小学生である。この子達は地元の小学生バスケクラブに所属していて、ある日私が指導して以来、この公園に来て個人練習を頼まれている。
「遅いよ壬琴ねーちゃん!待ちくたびれちゃった!」
「ごめんごめん。お菓子買ってたら遅れちゃった。みんなの分もあるから練習終わったら食べよ」
「「「わーい!!!お菓子ー!!」」」
「はいはい、その前に練習練習」
子ども達の背中を押して、コートへと向かった。
***
「よし、今日はこの位かな」
「えー、もうそんな時間ー?」
「わたし今日シュートいっぱい出来たー!」
「オレだって負けてねーよ!!」
「二人とも今日はシュート良かったよ。ほら、ご褒美」
「「わーい!ありがとー!」」
「ずるい!ボクもー!」
「まだたくさんあるから大丈夫だよ」
早く早く、と手を出しながら私に群がる3人に例のお菓子を配る。子犬みたいで可愛い。
「壬琴おねーちゃん、またバスケ教えてねー!」
「次はオレとフリースロー対決だ!」
「お前壬琴ねーちゃんに勝てるのか?」
「わかったわかった。みんな気を付けてねー」
「「「ばいばーい!」」」
「…さてと、私も帰ろうかな」
子ども達を見送ってから、カゴにボールを入れて再びペダルを踏んだ。
***
夕暮れ時のせいか、昼間より少し風が冷たい。顔がひんやりする中、またあの駄菓子屋の前を通りかかろうとした時、あの時の人を思い出した。
(そういえばあの人、どこかで見たような気が………ま、いっか。気のせいってことで)
それが気のせいではないことを知らずに、私は駄菓子屋の前を通り過ぎて行く。