あー、バスケがしたい。
某バスケ漫画じゃないけど、バスケがしたいです。それは家に帰ってベッドでゴロゴロしている最中に思った。中学時代一番仲良かったチームメイトの子を1on1でも、とメールで誘ったが断られてしまった…。
「しょうがない。1人で行こう」
ベッドから起き上がり、ボールとバッシュを取り、部屋を出た。
***
辿り着いたのはいつもの公園。今は誰もいなかった。バッシュに履き替えてゴール前に立ち、そこに向かってシュートを打つ。
パサッ。
そうそう、この音。シュートが綺麗に決まった時のあのネットの擦れる音が大好きだ。地面に落ちたボールを拾い、今度はレイアップ………やった、決まった!テンションが上がってきた私はハーフラインからシュートをしてみるが…ありゃりゃ、これは失敗。ちょっと調子に乗り過ぎたかな。
それからずっと、ただひたすらシュート練習をした――
中学時代の私はバスケ部に所属していた。うちの中学校は女子バスケ部の強豪校で、全国で数多くの優勝経験を持つことで有名だった。その中で私はエースとして、チームに貢献してきたつもりだ。練習はキツかったけど、あの頃はすごく楽しかったなぁ……
「…あ、もうこんな時間!そろそろ帰らなきゃっ」
気が付くと周りは暗くなり始めていた。ボールを持って出ようとした時、
「おーい、みこちーん」
「……えっ?」
何故?何故だ。何故紫原君がここにいるの?どういうこと?幻なの?
「……い、いつから見てたの?」
「みこちんがスリーポイント外した時から見てたし」
わぁ…、そんな前から見てたの。全然気付かなかったから恥ずかしい。あぁぁぁ…。
「てか、みこちんバスケできんだね。意外ー」
「運動苦手そうってよく言われるけど、これでもバスケは小学生の頃からやってるんだよ」
「ふーん」
「そんな紫原君はわざわざこんな所まで何しに来たの?」
「この先のコンビニ限定お菓子を買いにねー」
お菓子の為に…か。紫原君らしい。
「みこちんはこれから帰るのー?」
「うん。私の家もコンビニと同じ方向なんだ」
「だったら一緒にコンビニ付き合ってよー」
「えっ?」
「はい、じゃあ行こー」
「ちょっ、ちょっと待ってよー!」
紫原君は話を全く聞かずに、私の手を掴んで歩きだしてしまったのだった。
「着いたー。ここマジ遠いし」
結局私もお菓子を買いに付き合うことになってしまった。店内に入り、店員さんの声が聞こえる中で、紫原君はカゴを持ってお菓子コーナーにまっしぐら。心なしかいつもより動きがスピーディーだった。
「む、紫原君!?そんなにお菓子買うの?」
「いつもこんぐらいが当たり前だし」
「は、はぁ……」
駄菓子屋の時もめっちゃお菓子を買ってたけど、今はそれ以上かもしれない。目をキラキラさせながらお目当ての限定お菓子を選ぶ彼をただ見つめるしかなかった。
お菓子選びに夢中になっているうちに、カゴの中はいっぱいになっていた。気付けば私も一緒になってオススメのお菓子を教えたり、教えて貰ったりしていた。紫原君もようやく気がすんだのか、レジへ向かっていく。とりあえず一安心。会計を済ませて、私達はコンビニを出る。
「良かったね、いっぱい買ったね」
「うん。一緒に来てくれてありがとね。はい、これお礼ー」
と言って紫原君はビニール袋の中から板チョコを取り出して、それを私に差し出してきた。
「そ、そんな。いいよ、せっかく紫原君が買った物なんだから…!」
「いーからー、はい。」
「……あ、ありがと」
結局私は紫原君の強い押しに負け、板チョコを受け取った。
「じゃあ、オレ帰るねー。また明日〜」
「う、うん。また明日ね」
肩の辺りで手を振りながら、大きな背中を見送る。さて、私もこのチョコを食べながら帰ろうかな。