あれから私は教室を通りかかる度に、紫原君のことを観察していた。見る度にお菓子を美味しそうに食べていた。見かけによらず可愛い一面を持っているんだな。
***
「壬琴、お昼食べよっか」
「うん!」
私の席の後ろにいる晶ちゃんに声をかけられ、机を向かい合わせた。やった、お昼お昼♪なんて呟きながらお弁当を取り出す。
「そういえば壬琴、ずっと紫原君のことずっと見てたでしょ?」
「っ!!?なっ、ななな何言ってんの!?」
「だって通りかかる度に壬琴の視線が紫原君に向いてたんだもん。バレバレよ」
ニヤニヤしながら私を見つめる晶ちゃんが恐ろしく感じる。
「べっ別にそんなんじゃないよ!ただ…興味本位というか…。ど、どんな人なのかなって。…あっ、そんなことよりお菓子持って来たんだけど食べる?限定味のポッキーもあるよ!」
「あ、話を逸らしたな。まぁ食べるけど」
鞄から今朝コンビニで買ったお菓子を取り出し、それをお弁当の横に置く。ご飯を食べてからのお楽しみってことで。ようやくお弁当のフタを開け、唐揚げを口に運ぼうとした…………
「わー、机にお菓子がいっぱいー」
頭上から聞き覚えのある声が聞こえた。それに驚き、危うくむせそうになった。少し自分を落ち着かせてから、恐る恐る首を上げた。
「あ……」
声の主はなんと紫原君だった。いつ見てもデカい彼はお菓子が大量に入った袋を提げているにも関わらず、私の手元に置いてあるお菓子を物欲しげな表情で見つめている。ていうか、いつの間に教室に入って来たんだ。
「あ、あの…」
「それこれから食べるのー?」
「う、うん」
「いいなー。オレも限定味のお菓子食べたい」
「でもっ…「良かったら食べる?」えっちょ、晶ちゃん!?」
何言ってるの彼女は!?元はといえばこのお菓子は私のなのに…。私の言葉は無視ですか…?
「いいのー?」
「いいわよ。壬琴の隣空いてるから座れば?」
ちょっと!何で私の隣なんですか晶ちゃん!っていつの間にか私の隣に紫原君が座ってる!?しかもジーっとこっち見てる。うわぁ、私は一体どうしたらいいんだ。
「そう言えばキミ、昨日駄菓子屋にいたよねー?」
えっ?今なんて?
「ねぇ、いたでしょ?」
「あ、はい。確かにいました」
「やっぱりー」
驚いた。紫原君がそこまで覚えていたなんて。正直忘れられているだろうと思っていたから、驚きのあまり間抜けな顔をしてしまった。
「あの時はありがとねー」
「いえ、こ、こちらこそ…」
「はい。これあげる」
「えっ?」
そう言って紫原君が私に手渡してきたもの……それは昨日のあの新味まいう棒だった。
「これを、私に?」
「うん。昨日食べられなかったでしょー?だからお詫びってやつ?」
「あ、ありがとう」
彼の大きな手の中にあるまいう棒を両手で受け取る。それはお近づきのしるしに、ってとらえてもいいいのだろうか?