山本生誕祭 | ナノ




 

ケーキの魔法

「武ー。来たよー」

「よっ。入っていいぜ」


私は今、山本家に来ている。
私の彼氏である山本武は今日誕生日で、お祝いする為に遊びに来たのだ。



「ねぇ、折角の誕生日なのに本当に出掛けなくていいの?」

「いいぜ。俺は名前と一緒に居られればいいのな」

「・・・もう」


部屋にお邪魔すると真っ先に抱き締められた。
普段からは想像もつかない武の行動に私はキュンとしてしまう。


「あ、そうだ!ケーキ作ったんだけど食べる?」

「おう!」


家で作って来たケーキを取り出し、ナイフで切り分ける。


「味は自信ないけど許してね」

「おっ、美味そうだな!」

「食べていいよ」


お皿にケーキを乗せて武に差し出す・・・・・が。


「食べないの?」

「んー・・・あのさ、“あーん”してくんね?」

「え?」

「折角だし、名前にあーんして欲しいのな。・・・だめ?」


うわ、そのおねだり顔反則。
小首を傾げてフォークを差し出す武に、キュンキュンしまくりな私。
武が大きいわんちゃんに見えてきた。


「しょうがないなぁ。はい」

「あーん」


ゆっくりとケーキを武の口元に運び、食べさせた。


「ん。美味いのな」

「よかった。でもちょっと恥ずかしいよ・・・」

「まあいいじゃねーか。今度は俺が食べさせてあげるな」

「えっ!?」


こんなバカップルみたいなことを私達は続けていた。
でも、たまにはこんな時間もアリなのかな。

 

 戻る