雨色恋しずく | ナノ






長く感じた1日が終わり、いつものように弟たちの迎えの支度をする。



「…よし。行こっ」

「由香里ー」



聞き覚えのある声が背後から響いた。



「あれ?武、部活は?」

「休みなのな。チビ達の迎え行くなら、今日は俺も一緒に行くぜ?」

「えーっと、莉紗と菜々美もいるけど…」

「ごめん由香里ー。やっぱり行けなくなっちゃった♪」



…あの2人め。ニヤニヤしながらこっち見てるし。全く何考えてるのよ。



「じゃあ、ちょっと付き合って」

「おう!」




結局、武に同行して貰った。こうやってちゃんと2人で帰るのは久しぶりかも…。



「由香里と一緒に帰るとか久しぶりだな」

「そうだね。武野球で忙しかったし」

「部活もあるけど、最近親父が忙しくてそっちを手伝う時もあるからなー」

「おじさん、今大変なの?」

「まあな」



武のお父さんはお寿司屋さんをやっていて、私も何度かご馳走して貰ったことがある。凄く気さくで、優しい人だ。



「私も暇な時に手伝えればいいけどなぁ」

「だったら手伝ってくれよ!」

「うん…って、えっ!!?」

「暇な時手伝いに来てくれよ。親父も喜ぶぜ?」

「そ、そんな急に…春希と冬希の送り迎えだってあるし」

「休日だけでもいいから。頼むよ!」



そう言って武は私の前で手を合わせる。昔から頼まれると断れない性格の私にとっては、かなり効果がある。



「…休日ならたぶん大丈夫かも」

「サンキュ!何ならチビ達も連れてきていいからさ、おばさんと相談しておいてくれな」

「う、うん」



何だか武の表情が嬉しそうだった。昔と変わらない笑顔に、胸が熱くなってしまった。…これは一体なんだろう?




「由香里ねえちゃーん!」

「今日は武にいちゃんも一緒だぁ!」



いつものように私の元に駆けつけてくる。もう可愛い弟達です。



そして右側に私、左側に武、その間に弟達が挟まれて幸せな家族みたいな光景になっていた。なんかちょっと恥ずかしい・・・。



「武にいちゃん、今度一緒に遊ぼー!」

「春希だけずるい!ぼくもー!」

「まあまあ落ち着けって。お前ら2人とキャッチボールでもしてやっから」

「「わーい!」」



優しい笑顔で笑う武を見て、どこか安心感を抱いていた。そして少しだけ、今の家族のような時も悪くない気がした。

 


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