また朝を迎える。最悪な事に寝坊してしまった私は慌ててご飯をかきこみ、玄関を飛び出す。
「ヤバイ!急がなきゃっ!!」
猛ダッシュで学校に向かう。遅刻なんてしたら風紀委員に怒られるから。呼吸が荒くなりながらも必死に走り続けた。
***
ギリギリセーフ!――じゃなかった。
目の前には風紀委員長の雲雀さんが私を睨み付けている。
「君、遅刻するなんていい度胸だね」
「いや、違うんです!たたたまたま寝坊しちゃっただけでっ…」
「遅刻は遅刻だよ。僕に口答えする気?」
「…っ!」
怖くて目をキツく閉じる。
「まぁまぁ落ち着けって、雲雀」
「ぇっ?」
聞き覚えのある声がして見上げると、武の姿があった。武は雲雀さんの腕をガッシリ掴んでいる。しかもめっちゃ笑顔。
「…何、君も咬み殺されたいの?」
「今日は見逃してくれよ。コイツの幼なじみの俺からのお願いなのな」
不機嫌な顔をする雲雀さんをニコニコしながら宥める武。しかも“雲雀”って呼び捨てだった。いつの間にそんなに仲良くなってるの?
「…勝手にしなよ。群れたくないから帰る」
そう言って雲雀さんはスタスタと歩き出してしまった。私はその後姿をただボーっと見つめていた。
「…あ、ありがとう」
「ん?気にすんなって。」
「…何で此処に来たの?」
「由香里がなかなか来ないと思ったら窓から見えて、雲雀に絡まれてるなーって気付いて来たのな」
「そ、そうなんだ」
「ほら行こうぜ。チャイム鳴っちまう」
「え?あっ…」
一瞬の間で武は私の手を引っ張った。それに何故か私はドキドキしてしまった。幼なじみだから小さい頃からこんな風にしてたのに、体が熱くなる。武は大人になったなぁ…。手が大きい。そんな事を思いながら私達は校門を潜った。
「由香里ー。あんた山本君と手繋いでたね」
「えっ、何!見てたの!?」
「窓から見物させていただきました〜♪」
教室に入って早々、莉紗と菜々美がニヤニヤしながら尋問してきた。
「たっ、ただの幼なじみだから…」
「照れるなって。私から見れば山本君が幼なじみなんて羨ましいよ」
「ホント。カッコいい幼なじみって憧れるー!」
確かに武はファンクラブが出来る程の人気者。スポーツ万能だしみんなに優しいから、女の子達からモテるのも無理はない。何度プレゼントを代わりに渡したことか。それに比べて私なんて平々凡々。釣り合って無いのはわかってる。そんな私が何で武と幼なじみなのか、聞きたいくらいだ。
そんな事を考えていた時、いつものチャイムが木霊した…。