「…よし!これで全部買えた」
メモや値札と睨めっこしながらの買い物もやっと終わった。袋を自転車の荷台に乗せて帰路につく。
「おっ、由香里ー!」
「あっ、武!」
「「武にいちゃんだ!」」
こっちに向かって走って来るのは、私の幼なじみの山本武。小さい頃から家も近所で、小学生の時からずっと同じクラスという何かと近い存在だったりする。
「今日も買い物してたんだな」
「うん。晩御飯の材料をね」
「ん、袋貸せよ。持ってやるのな」
「えっ、あ、ありがと」
籠に乗せきれなかった袋を、武はさり気なく持ってくれた。重そうな野球のバッグを持っているのに、彼は笑顔で軽々持ち上げた。
「由香里、最近どうだ?」
「んー…ぼちぼち」
家の両親は共働きだ。お父さんは単身赴任中で、お母さんは独りで頑張らなきゃいけない。だから私はお母さんのそばにいて、支えてあげる事にしている。それを武も理解してくれている。
「大変なのな。何ならまた息抜きにでも家の寿司食べに来いよ!」
「うん。ありがとう」
それから私達は家までずっと歩いて来た。武と別れ、家の中に入って行った。
「「「ただいまー」」」
「おかえり」
「お母さん、買い物行って来たよ」
「ありがとう由香里、直ぐにご飯の支度するから」
「うん」
こうして何も無く、ずっと平和な生活を送れる。
―――そう思っていた。