雨色恋しずく | ナノ






今日は休日。特にこれといった用事も無く、家で弟達の面倒を見ていたが、昨日武が言っていたことを思い出していた。



「暇な時手伝いに来てくれよ。親父も喜ぶぜ?」



そう言えばおじさんとまともに会っていなかった。でも今忙しいらしいから、手伝ってあげたいけど今行っても邪魔になっちゃうかな・・・。



「……」

「由香里ねーちゃん?」

「…ん?あっ、何?」

「どーしたの?」

「ううん。なんでもないよ」



心配そうに私の顔を覗き込んできた弟達。もしかして顔に出ていたのかな?



「由香里ねーちゃーん。ぼくお腹すいたー」



春希がそう言ったので時計を見ると、12時だった。



「何食べたい?」

「「お寿司」」

「え?」

「ぼくお寿司食べたい!」

「ねぇねぇ、武にいちゃんち行こー」



……まさかの答え。



私もお寿司食べたいけど、そんなにお金持って無い。でもお腹すいちゃったし…。



「…行ってみよっか」

「「わーい!」」

「じゃあ支度して行くよ」





家からちょっと歩き、武の家に到着した。



「いらっしゃい!…おぉ、由香里ちゃんじゃねーか!」

「こんにちはおじさん」

「今日はどうしたんだい?」

「弟達がお寿司食べたいって言うから来ちゃって」

「そうかい!遠慮しねえで食ってけよ。ほら座って座って」



おじさんは笑顔で私達を迎えてくれたが、私達以外にもお客さんがたくさんいて、おじさんはすぐにそっちに行ってしまった。やっぱり、忙しいんだな…。





***

しばらくお寿司を食べてお腹いっぱいになったからか、弟達は眠ってしまった。



「すみません、おじさん。この子達寝ちゃって…」

「子供はそういうもんだからいいんだよ。武の部屋使いな。アイツ今いねぇから」

「ありがとうございます」



私は2人を抱き上げ、武の部屋へ連れて行った。相変わらず野球のグッズがいっぱいの部屋で、武らしい部屋だった。敷いてあった布団に寝かせ、そっと掛け布団を掛ける。そして私はゆっくりと階段を下りる。



「あの…。おじさん」

「どうした?由香里ちゃん」

「何かお手伝いさせてくれませんか?」

「え?手伝い?」

「お寿司ご馳走になっちゃったし、お礼に何かしたくて」

「…ありがとう由香里ちゃん。じゃあ頼むよ」

「はい!」

「早速そこにある皿を洗ってくれねーか?」

「はい!」



私は目の前にある皿を洗い始める。





――何だかんだで夕方になるまで手伝っていた。



「由香里ちゃん助かったよ!お疲れさん!」

「いえいえ。お役に立てたなら何よりです」

「また暇な時に手伝いに来てくれねーか?これからも家で働いてくれよ」

「はい!いつでも来ますよ」

「チビ達も連れて来ていいからよ、頼んだぜ」



私の肩をポンポン叩いておじさんは笑う。



「親父ーただいまーって由香里!」

「よう武!丁度良かった。由香里ちゃんを送ってやってくれ」

「おう」

「おじさん、今日はありがとうございました!」

「「ごちそうさまでしたー!」」

「また来いよー!」




***

「今日お店手伝ったんだ」

「そっか。サンキューな」

「武の部屋ちょっと借りちゃった」

「いいっていいって。お前等、よく寝たか?」

「うん。武にいちゃんの布団ふかふかだったよ」

「だろ?」

「たぶんこれから武んちでバイトみたいな感じになるかな」

「マジか!宜しくな」

「うん。来れる時は行くね」

「由香里がいれば心強いのな!」



まただ。この胸の高鳴り。武の笑顔を見るとドキドキして、顔が熱くなる。でもどこか安心している自分もいた。



「じゃあ、また宜しくな!」

「うん。送ってくれてありがと。」



そうして家の前で私達は別れた。

 


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