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なまえ、次の休みどっか行こうか


同僚である花巻貴大と恋人同士になってから
早いものでもうすぐ3ヶ月
仕事の合間伸びをする私に近づき
缶コーヒーと一緒に放った一言は
飛び上るほど嬉しかった
3ヶ月間休日を共に過ごすことは多々あったけど
どこかに遊びに行くことは滅多にない
まぁ、私が仕事疲れでダウンしてるせいでもあるんだけど

そんなわけで今朝は早起きしてシャワーを浴び
メイクも服もばっちり
花巻がプレゼントしてくれたネックレスが胸元でキラリと光るのを確認してつい口元がにやけてしまう
そんなときコンコンと扉をノックする音
はーいと大きく返事をすれば扉の向こう側から花巻の声

「準備、できた?」

「うん、バッチリー!」

「じゃ、早くおいで」

扉を開けるといつもより少しだけ気合の入った花巻の姿

「なんか気合入ってる?」

「お互いさまデショ?」

からかったつもりが呆気なく返される
いつものニヤニヤした笑みを浮かべたと思ったら
不意打ちでちゅっとおでこにキスされた

「な、に・・」

「今日も可愛いなと」

「っ・・いいから、ほら行くよ!」

「はいはい」

赤くなってる顔をあまり見られないよう
さっさと鍵をかけ先頭を歩く
毎度のことながら、
しれっと恥ずかしいことを言う花巻には
本当に困ってしまう
恋人同士の期間より同僚でいた時間の方が長いせいか
余計にこっ恥ずかしい

「どこ行くの」

「え?」

「こっち」

「えっ・・・車?」

マンションを出て駅へ向かおうとすると
花巻に腕を引かれ止められる
こっちと指さす先にはどこからどう見ても車

「え、えぇぇ!?花巻の!?」

「言ってなかった?」

「知らないよ!運転できんの!?」

「ほー、なまえチャン、バカにしてますね?」

とかなんとか言いつつも、
ガチャっと助手席の扉を開け
さり気なくエスコートしてくれる。紳士か
まるでお姫様にでもなった気分、なんて
柄にもないことを思ってしまう

助手席に腰を下ろせば、
爽やかな消臭剤の匂いが鼻孔をくすぐる
男の人が運転する車の助手席なんて
考えてみれば初めてかもしれない
運転席に乗り込んでハンドルをラフに握る花巻に
なんだかものすごくドキドキしてしまう

「急にどうしたの?」

「ちょっとね」

「なにそれ」

「いーからいーから」

何を企んでいるのか、
相変わらず口元をゆるくニヤつかせている
そんな花巻が一瞬だけこちらを向いたかと思えば、
驚いたように少し目を見開きぷいっとまた前を向く

「何」

「イヤ、なんでも」

「嘘、絶対なんかある」

「怒んない?」

「・・・内容による」

「ソレ、すげームラっとする」

顔は前を向いたまま、左手でソレと指さす先は私の胸元
シートベルトを締めていることによって
いつもよりも目立つ二つの膨らみ

「花巻さんサイテー」

「いや、ご無沙汰だししょうがないでしょ」

ニヤニヤしちゃってこの変態
いつもと少しだけ違うデートでも、
こういうしょうもないやり取りはいつも通りなんだな
やれやれと一息つき、窓から流れる景色を眺めていると
ふいに「なまえ」と低めの声で呼ばれる
少しだけびっくりしてすぐに運転席の方へと顔を向ければ
ものすごく近い距離に花巻の顔
声を発する隙すら与えられず、唇を唇で塞がれた
フレンチキスにしては少し長い、
しっかりとしたキスに戸惑う

「っ・・・は、花巻!前!」

「信号待ちですが」

「急にビックリするでしょ!」

「うん、我慢できなかった」

ごめんね、と悪びれもなくケロリと言う目の前の男に脱力
キスなんていつもしてるのに、
車の中ってだけでなんか変にドキドキするのは何故だろう
このドキドキが伝わってないか確認してみるも
花巻の表情からは何を考えているのか一切読み取れない
私ばっか緊張してるみたいでとても悔しい

信号が赤から青へ変わり再び走り出す車
車内の沈黙を破ったのは花巻で

「これに乗ったからには、夜まで帰さねーからそのつもりで」

「!?」

余裕そうに頭をくしゃりと撫でられ
私の心臓はもう爆発寸前
どうしてそんなにカッコイイんですか、
出かかった言葉を呑み込んで下を向く

どこに行って何をするのか、なにも分からないけど
たまには彼に流されてみるのも悪くないかもしれない


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naosuke様
花巻貴大の場合