ここはどこ、貴方は誰?
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ウキョウ「マイ。」


いつも通り、冥土の羊に
バイト終わりのマイを迎えに行った。

マイはちょうど裏口から出てくるところだったので
手を振りながら名前を呼んだ。


『…?』


マイは首をかしげる。

あ、もしかして
今日の朝食を冥土の羊に食べに行かなかったら
不思議に思ってるのかな?


ウキョウ「今日はね、朝から撮影に行ってたんだ。
ほら、桜が綺麗でしょ?」


説明するようにマイにそう言った。

でも、マイはぼーっと俺を見つめるだけで
様子がおかしいと思った。


ウキョウ「どうかした?」

『えっと…あの…。』


俺の問いに少し戸惑う素振りを見せながら
マイはこう続けた。


『…ここはどこ?貴方は…誰?』

ウキョウ「え…?」


俺は一瞬頭が真っ白になった。

しかしすぐにマイが記憶喪失になった
あの八月の出来事を思い出して、焦った。


ウキョウ「ま、また記憶喪失になったの?!
今、何か見えてる?!
ふわふわ浮いてる男の子の精霊とか!
確か八月の時はマイだけに見えてたんだよね?!
あ、でも今は覚えてないか…。」

『あ…。』

ウキョウ「もしかして頭を強く打ったとか?!
崖から落ちたりした?
崖じゃなくてビル?!
どうしよう、病院とかに行った方が…!」

『ウキョウ、待って!』


マイが俺の腕をつかんだ時
我に返った。

それより今…。


ウキョウ「ウキョウって言った…?」

『ごめんなさい。
私、記憶喪失なんかしてないの。』


頭を下げてそう言うマイ。


ウキョウ「どういう事…?」

『あの…今日エイプリルフールだから
嘘ついちゃった。』


ふわりと笑うマイ。


ウキョウ「よかったよ…、嘘で。」

『あの一言で
ウキョウがあんなに焦ると思わなくて。』


ここはどこ、貴方は誰?


ウキョウ「焦ります!冗談にならないよ!
とくに、八月の事があるからね!」

『ウキョウ、ごめんね…?』

ウキョウ「う、上目づかいは反則!」


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