で、一体何がやりたいのかという話である。
やってきたイツキ殿も交えて(酷く驚いていた。無理もない)、主の真意を問いただす。
「何って。昨日イッちゃんが言ってた通りのことをするに決まってるじゃない」
さて、この御仁。昨日何を喋っていたか。
「秋の収穫祈願と魔除けの意味め込めて仮装して菓子を貰いに歩く」
ですよねー。
確かに貴殿はそんなことを言ったよ。
「はあ? カボチャ伯爵が正義のランタン片手に鉄槌をぶっかまして歩くんでしょ?」
やれやれと我が主。
やれやれ言いたいのはこっちの方である。
……まあ、これで望みはわかったようなもんだけど。
「んなこと言ってねーよ! てか、どうやったらそんな話になるんだよ!」
「イッちゃん大丈夫? 最近、あのゴッツい教師に振り回されてるみたいだから疲れてんじゃない?」
「疲れてない!……いや、疲れているとしたら、それはお前のおかげだよ」
「そう? えへっ☆」
「言っておくがな、別に誉めてないからな」
と、あれこれ話しながら学園に突入を開始した我々。
みなの視線が痛い……のは気のせいであってほしい。
通路を歩くとひそひそ声が聞こえた。「なんだあれ」と指さして、こそこそする。「またアルトリアだよ」まったくですな。
「ふふ。みんな貴方に期待してるわよカボチャ伯爵」
嬉しくない。とは言えないので、
「さようで、ですか」
ぺこりと頭を下げる。
「しかしさ、お前って人間だったのか?」
こそっと近寄ってイツキ殿は耳打ちした。
確かに、まあ、この姿ならば……
「人間なんでしょうね?」
「何で疑問系」
「今は、だけれども。それまでは人間に分類された記憶はない」
「だよな」
だよな、です。
けれども《復活祭》というのはあながち嘘ではないようだ。
何であれ肉体を得て、こうして地を踏むなどはてはてどれくらいぶりになるのか?
長い長い記憶を巡っても到底たどり着けそうもない。
「さて、やるわよ!」
腰に手をあてがり、命令の姿勢は整った。
にかり、と主はそれはそれは魅惑的な顔で微笑んでみせる。
「カボチャ伯爵出動!」
出動。
……したくはない。
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