「へー、ハロウィンね。何だかとっても愉快そうっ!」
「楽しいとは思うけど、愉快かどうかは……まあ、確かに色んな格好するわけだし」
「で、で、カボチャ伯爵が正義の鉄槌をぶっかまして歩いた後、その後はどうなるの!?」
「カボチャ伯爵!? どっから出てきたそいつは! 俺、いつ言ったそんなこと!?」
「夢が膨らむわね〜。明日は復活祭だし、もしかしたらもしかしなくともひょっこり現れてくれるかも。正義のランタン片手に」
と、そんな話をしていたのは昨日のこと。
明日は復活祭だよねー、と我が主アルトリア・メルセディクの言葉から始まり、復活祭といえばハロウィンだよな、と異世界人であるイツキ殿がハロウィンとやらの説明を始めてそんな話になったのである。
で、微妙な伏線に気づきつつも、そんなことはありはしないと余裕をかましていたらこうなった──のが本日である。
「…………」
僕は鏡を見た。
自身の姿を確認したのだ(はてさて己を確認するなどいつぶりか)。
で、衝撃。
驚いたよね。
「…………」
カボチャいた。
正確にいうと目と口をくりぬいたカボチャを被った裸の人間。
「僕か?」
と訊いたところで誰も答えてくれるわけでもなく、取り敢えず裸はまずいよなあ、などとごちて適当に布切れを引っ張って羽織ってみた。
「…………」
さて、どうするべきか。
そんなもの悩んだって結局答えはひとつなのである。
まるで頃合いを見計らったように、勢いよく寝室(正しくは主の)が開かれて、このおかしな事態を引き起こしたであろう人物が満面の笑顔で入ってきた。
「主、ひとつ訊きたいのだが」
「なに?」
突如現れたおかしなカボチャ(自分で言ってとっても切ないが)に動じぜずにいるってことは……まあわかっていたことだけれども。
「僕になにしたの」
「カボチャになる錬金術」
「………」
さて、錬金術がなんたるかを一から説明しなくてはならない。
が、それを言ってはいそうですかなどと素直に頷いてくれる方ではない。
頭が痛くなる。
取り敢えずわかっていることは、
「我が主アルトリア・メルセディク。何がお望みで?」
彼女がこのおかしな事態を望んで引き起こしたということだ。
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