「プチ久しぶり、朝比奈」

「ちょ、……大丈夫なの? 怪我、したの?」

「ああ。これ? 乱闘抑えるのに巻き込まれただけだから大丈夫」


 乱闘?
 千夏は眉根を寄せた。
 さらりとすごく物騒なことを言われたような気がする。



「おかえりなさい、犬飼さん。いつ帰ってこられたんですかあ?」


 と言いながら、冬季はパタパタと駿のもとへ走っていく。


「今だよ」

「それで、その……どうでしたあ?」

「あの調子じゃ話は多分保留。というか、話す前に暴れちゃったから、もうもう」

「そうですか」



 しゅんと冬季は肩を落とした。駿が苦く笑いながら、その肩をぽんぽんと叩く。



「それよりさ、冬季」

「はい」

「さっきの、俺に譲ってくんない?」

「さっきの?」

「ん。俺、朝比奈の槍だし。俺たちは何者ってやつ。話すなら、俺から話したいんだ」

「わかりました」



 駿と千夏を交互に見、冬季はぺこりと頭を下げた。
 床に置いた大量の本を再び抱え直して、図書室から静かに退室していく。



「朝比奈さ、今から大丈夫?」


 千夏が頷いたと同時に、昼休み終了のチャイムが響いた。


「あ」

「五・六限は完璧サボリになっちゃうけど」

「うん」

「望むなら、全部話すから。だから」


 五・六限の時間は俺に頂戴ね。

 そう言った駿の笑顔はとてつもなく眩しかった。

 


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