何か知っているであろう父も、どこかに行ったきりで帰っている節は見あたらなかった。
 のだが、千夏の分の朝食は今朝もしっかりと用意されていた。



(一体いつ帰ってきたんだか)


 どうしても納得出来なくて、千夏は首を捻る。

 上手いことはぐらかされている感じがして、どうもスッキリしない。



(私も、関係してるんだよ、ね?)



 知らない、わからないというのはとても気持ちの悪いものだ。

 行動派と呼べるほど、千夏は自らガンガン攻めていくタイプではない。
 けど、知らないところで自分をかき回されて我慢出来るほど、慎重にものを構えていられる性格でもない。



 むーっと唸り始めた千夏に、睦美はケラケラて笑った。まったく他人事だと思って──とは心の中だけで呟いとく。



「まあさ、何で悩んでいるかはわからないけど、悩んでらんないぐらい忙しくなるから安心しなよ」

「?」

「あ、そっか。千夏は知らないっか。今年はどんぐらいの規模でぶっかますんだろうねー?」


 と、睦美は笑顔をよそへと向ける。
 つられて顔を上げるといつの間にか幸也がいた。 彼は適当に椅子をかっぱらい、輪の中に入ってくる。



「どうだろうな。今年は補佐役員増やすって実行委員の連中言ってるみたいだし、生徒会も協力的だって話だからな」

「なんのこと?」


 千夏は小首を傾げた。
 学園には慣れたといっても、ここにやってまだ半年ぐらいだ。知らないことはまだまだ沢山ある。


「なに? と言われても正直、なにやるかは答えられないんだけどね」

「はあ?」


 ますますわけがわからない。


「うち、祭り好きが多いのさ」

「祭り?……学園祭とか?」


 学校で祭りといえばそれぐらいしか思いつかない。
 千夏が春まで通っていた高校も、それなりに学園祭なるものには力を入れていた。

 悩みを吹き飛ばすほどの忙しさ──は確かに、準備やら何やらで、悩んでられないほどに、いっぱいいっぱいになるかもしれない。

 だが、そこまで大袈裟なものか。

 試すように問いかければ、二人は顔を合わせて同じタイミングで苦笑を浮かべた。



「学園祭ね。まあ、学祭は確実に入るわな」



 幸也は妙な答え方をした。
 千夏が怪訝に首を傾げていると、我も続けとばかりに、睦美は話に火を灯す。


「そうね、学祭はまず確実。──ああ、あのね、千夏。うちの学校、二学期のイベント数って半端ないのよ。何でもかんでも名目つけて、クリスマスまで毎月毎週毎日マシンガンで騒ぐの」

「マシンガンで騒ぐって……」


 一体どれほどやるつもりなのか。
 興味半分、不安半分で千夏が問いの視線を送れば、


「わからん」


 幸也は即答した。


「……なにそれ」

「その年その年で、数も内容も様々だからな。だからわからん。すべては実行委員次第だ」

「まあ、生徒会の許可が出ればなんだけどね」


 と、睦美はちょっと意地悪く笑った。





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